正しい姿勢で能力を発揮

Coaching

正しい姿勢でいると、ジムの中でも外でも身体の心地よさと力強さを実感できる。目標達成のために姿勢を正す方法を紹介。

最終更新日:2021年1月28日
良い姿勢がパフォーマンスの向上につながる理由

子供の頃、「背筋を伸ばして座りなさい」と注意された人は多いはずだ。

姿勢を正すことで、体の不快感や痛みを解消できる。それだけではない。正しい姿勢は、運動能力の改善にもつながるのだ。

良い姿勢と、悪い姿勢

正しい姿勢とは、本来あるべき自然な状態に体を維持すること。その際に、最も重要なのが脊椎の状態だ。つまり正しい姿勢とは、両肩を後ろに引き、胸を張り、背筋を伸ばし、骨盤を自然な位置に置き、両耳が肩の上にくる(つまり猫背にならない)ような姿勢だと説明するのはR・アレクサンドラ・デュマ氏。FICSでスポーツカイロプラクターを務め、DACBSPの学位を持つ専門家だ。あまりにも要求が多すぎるように感じるかもしれないが、1か所か2か所を正すだけで、姿勢全体を正すことができる。なぜなら、人間の体は操り人形のようなもの。1本の糸を動かすだけで、他の部位も連動して動くようにできているからだ。

現代人は、長時間にわたってスマートフォンを覗き込むことが多くなった。そのため、本来あるべき自然な姿勢を維持することが難しくなっている。結果として、活性化すべき筋肉(具体的には深頸部屈筋)が緩み、肩と首が前かがみになり、負荷をかけるべきでない繊細な筋肉に過度の負荷がかかっているのだとデュマ氏は言う。人間の頭はおよそ5〜6kgの重さがあるが、前に15度傾けるだけで、12kgもの負荷が頸椎や頸部にかかることになる。「この負荷が積み重なって、骨、関節、靭帯の摩耗につながるのです」とデュマ氏は説明する。

猫背の姿勢は、一時的に楽に感じるかもしれないが、より多くのエネルギーを消費している。そもそも本来あるべき自然な姿勢ではないのだ。アメリカ代表のアスリートたちをクライアントに抱えるデュマ氏は警告する。不自然な姿勢を長時間維持するためには、体が余計にがんばらなければならない。その結果、何をしていても疲れやすくなるのだ。また姿勢を正すことで動作の効率が向上し、より少ないエネルギーで日々の活動やトレーニングに取り組むこともできると指摘するのは、理学療法士のダン・ジョルダーノ氏。ニューヨークの理学療法クリニック「ビスポーク・トリートメンツ・フィジカル・セラピー」のCMOも務めるエキスパートだ。

「猫背の姿勢は、一時的に楽に感じるかもしれないが、より多くのエネルギーを消費している。そもそも本来あるべき自然な姿勢ではないのだ。不自然な姿勢を長時間維持するためには、体が余計にがんばらなければならない」

R・アレクサンドラ・デュマ
(ニューヨークのウェルネスセンター「FICS」のスポーツカイロプラクター、DACBSP保持者)

良い姿勢がパフォーマンスの向上につながる理由

姿勢とパフォーマンスの関係

当然のことながら、姿勢は運動に影響を与えるとジョルダーノ氏は言う。特定の身体部位の動作に制限があると、それを補うため周辺の筋肉や関節に負荷がかかる。結果としてケガのリスクが高まり、パフォーマンスに悪影響が及ぶのだ。

例えば、バレーボールやウェイトリフティングなどのオーバーヘッドスポーツをやる場合、姿勢が悪いとサーブやプレスの際に肩甲骨が内側や上方に大きく回転する。その結果、肩インピンジメント症候群などのケガのリスクが高まるのだとジョルダーノ氏は言う。

姿勢が悪いと、胸椎(脊椎のうち、首の下から肋骨の下までの部分)の動作も制限される。その結果、胴体を回転させて力を生み出す能力が制限される。特にボクシング、ゴルフ、テニスをやる人は要注意だ。

姿勢が重要なのは、ウェイトリフティングなどの高負荷な運動だけではない。デュマ氏によると、ランニングの際にも、骨盤が脊椎の自然な曲線に沿った位置にないと、本来は臀部にかかるはずの負荷が、背中や膝にかかることになるという。また猫背になると、呼吸の効率も低下する。つまり姿勢を正すことで、よりハードな運動を長時間にわたって続けられるようになるというわけだ。

それでは姿勢を正して、パフォーマンスを最大限に発揮するにはどうすればいいのか。具体的な方法を紹介しよう。

  1. スマートに働く。
    デスクワークをしていると、どうしても長時間にわたって前かがみの姿勢になってしまう。だからコンピューターのモニターを目の高さに合わせてみよう(ノートパソコンを使用している場合は、モニターの購入を検討しよう)。肘は90度曲げた状態だ。立って仕事をするのが理想だが、椅子の場合は深く座り、足をしっかりと床につけ、腰が膝よりわずかに上にくるように座る。中背部(できれば頭部も)を支えてくれる椅子を選ぶようにしよう。
  2. こまめに歩く。
    長時間座りっぱなしになるのを避けるため、45分ごとにアラームを設定することをジョルダーノ氏は推奨している。アラームが鳴ったら、自分の姿勢を確認し、立ち上がって、5分間(正しい姿勢で)歩こう。「歩くことで血行が良くなり、脳を休めることにもなります」
  3. ストレッチする。
    椅子に座ったまま、手のひらを太ももに置き、ゆっくりと肩を下および後ろに動かす。肩甲骨を寄せる動きを5-10秒続け、これを1日に3-5回繰り返す。「こうすることで前かがみの姿勢をリセットして胸を張り、横隔膜を使った深呼吸ができるようになります。その結果、エネルギー消費を抑えて、心拍数を下げ、血行も改善できます」とデュマ氏は言う。

    あるいは前腕プランクで、腱板・肩甲骨周辺の姿勢筋や体幹を鍛えるのも有効だとジョルダーノ氏は言う。抵抗バンドを手首に巻いて前腕プランクの姿勢になり、バンドの抵抗をキープしたまま両肘を床に押し当て、15-30秒くらい姿勢を維持する。これを1日3-5回実践しよう。

すべての運動をミックス

姿勢を簡単に正せるような、手っ取り早い解決策は存在しない。正しい姿勢を常に意識することで、習慣づけるしかないのだ。「正しい姿勢を取り続けることで、運動神経が反復的なパターンを認識するようになり、姿勢が改善します」とジョルダーノ氏は述べる。目に見える効果が現れるまで、前述の前腕プランクを週に3回以上、4-6週間やり続ける必要がある。

子供時代に「背筋を伸ばして座りなさい」と注意されたとき、言うことを聞かなかったあなた。今からでも遅くないから始めよう。そしてあのときの小言に感謝するのも忘れずに。

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公開日:2020年11月13日

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