眠りたいときに眠る力を身に付ける

Coaching

寝つきの良さは、訓練で身に付けることのできるスキルだという。実際、多くの一流アスリートが、「トレーニング」で眠る能力を高めている。アスリートがどんなトレーニングをしているのか、また寝つきを改善するために私たちが実践できることをご紹介。

最終更新日:2020年12月21日
眠りたいときにすぐ眠るコツ

「よし、寝よう!」友人や兄弟、乗り合わせた乗客が、魔法にかかったようにあっという間に眠りに落ちるのをうらやましく思ったことはないだろうか。そういうあなたに朗報だ。訓練次第でスムーズに入眠できるようになることが、新しい研究で明らかになった。

最近の研究によると、一流アスリートは、アマチュアアスリートや運動をしない人と比べて昼寝での寝つきが良かった。眠気を感じておらず、前日の睡眠時間も他のグループとまったく同じだったのにもかかわらずだ。「これは、一流アスリートが眠りたいときに眠れるという卓越した能力を持っていることの表れです」そう語るのは、English Institute of Sportのシニアサイコロジスト兼、主任睡眠科学者のルーク・グプタ博士。この研究の共著者だ。この「眠る能力」に関する博士の理論こそ、一流アスリートがトレーニングとして実践していることなのだ。

眠る能力に影響を与える要因とは

寝つきの良さはある程度遺伝するようだ、そう言うのはラフバラー大学のスポーツ、エクササイズ&ヘルスサイエンス学部、心理学講師のルリアナ・ハーテスク博士。環境も影響を及ぼす。起きている時間が長くなるほど体と脳は眠りを求める。また教育も要因の一つだ。「私たちは乳児期からずっと、眠りにつく方法とタイミングを学んでいます」とハーテスク博士は話す。歯みがきをする、照明を消す、自分にとって心地よい姿勢で横になるといった行動は、無意識状態に入るための「無意識に行う儀式的行為」だという。

しかし、成長するにつれ、乗用車の助手席などどこでも眠れるようになる人もいれば、自分のベッドで眠りに落ちるのでさえ苦労する人もいる、とハーテスク博士は説明する。

しかし、成長するにつれ、乗用車の助手席などどこでも眠れるようになる人もいれば、自分のベッドで眠りに落ちるのでさえ苦労する人もいる、とハーテスク博士は説明する。

ルリアナ・ハーテスク博士
ラフバラー大学のスポーツ、エクササイズ&ヘルスサイエンス学部、心理学講師

眠りたいときにすぐ眠るコツ

眠る能力を高めるには

誤解のないように言うと、一流アスリートが誰でも眠る能力に長けているわけではない。グプタ博士が共著者を務めた2017年の研究では、多くの一流アスリートが、特に試合の前後で睡眠に多くの問題に直面していることがわかった。試合前は緊張、試合後は興奮状態にあるためだ。移動や過密スケジュール、またハードで膨大なワークアウトによりうまく眠れないこともある。同じように、普段はスムーズに入眠できる人でも、重要な試験や会議の前や外泊するとき、またはシュガーハイになっているときなどは、眠れなくなる可能性がある。

最近の研究から、寝つきが良い人は、練習と一貫性によって身に付けたスキルが備わっているとグプタ博士は考えている。その能力は、意識して身に付けた習慣の結果であり、誰でも習得することができるものだ。以下にその方法を紹介する。

1. 適切なタイミングを待つ。
休まらない夜が続いた後に睡眠を取り戻そうと早く寝床についても、逆効果になる場合がある。「どうして寝付けないのだろうか」という考えにとりつかれ、悪循環に陥る可能性があるのだ。逆にもう少し夜更かしすれば、体の休みたいという欲求が自然に湧いてくるとグプタ博士は説明する。つまり、疲労は眠気とは異なるため、眠気に襲われるのを待ってからベッドに入るのが望ましい。眠気に襲われるタイミングがわからないと思うかもしれないが、まぶたが重くなる、あくびが止まらなくなるなど、体が教えてくれる。意図的に眠ろうとしてもうまく眠れない。

2. 考え過ぎる思考のスイッチを切る。
興奮(心が奪われる思考のことであり性的な意味ではない)は、すぐに寝付けない要因になる。床につく前、またようやく眠りにつこうとして急に不安に取りつかれたときは、「不安を和らげる」こと、つまり何に不安を感じているのかを書き留めるとよい、とグプタ博士はアドバイスする。この方法で、とりあえず悩みを頭から追い出してしまおう。

3. 慣れない土地にはなじみのあるものを持参する。たとえただの帰省であっても、普段とは異なる環境に身を置くと、睡眠が妨げられることがある。これを研究者は「第一夜効果」と呼ぶ。いずれ体は変化に適応するだろう。ただ、最初から寝つきをよくするために、枕カバーや写真(スマートフォンに保存されている写真ではなく本物の写真)など、自分の寝室にあるものを持って行くことをグプタ博士はすすめている。また、荷物をスーツケースに入れたまま生活するのではなく、きちんと荷解きをすれば「自分の居場所づくり」になるとも言う。リラックスを助け、スムーズに入眠する準備が整うというわけだ。

4. 横になってリラックスする。
睡眠は従来のトレーニングや栄養学のようにはいかない。グプタ博士によれば、積極的に寝ようとすればするほど目的を果たすのが難しくなるとのこと。反対に、寝てはいけないと繰り返し自分に言いきかせたり、天井の一点を見つめたりして起きたままでいようとすることは、意外にも効果がある。このいわゆる「逆説的志向」は、睡眠が受動的な行為であるという事実によるもの。がんばって眠ろうとしないことで、寝つきやすくなるのだ。

以上は、睡眠の質を上げるためのヒントだが、すぐに効果が現れるわけではない。違いを実感するためにグプタ博士が提唱しているのは、このアドバイスを数週間にわたって毎晩実践すること。もしかしたら、あなた自身が眠れない友人や家族の羨望の的になるかもしれない。

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公開日:2020年11月11日