新しいアクション

5歳から兄とともにレスリングを始めた中村未優はインターハイやジュニア世界選手権で華々しい成績とともにキャリアを形成。従来の大学レスリング部での女子選手の練習環境に疑問を感じ、自ら新しい環境作りを試みてきた。女性アスリートを取り巻く環境や出産などを経たアスリート人生のあり方など、彼女は自分だけでなくスポーツ界全体の未来を常に考えている。

現在所属しているSports Design Labに参加された経緯を教えてください。

中村未優：女性アスリートの育成や競技継続はスポーツ界の課題ですが、私も幼い頃からのライバルがどんどん辞めていくのを目にして、すごく才能ある選手でも続けたいと思う環境や続けられる環境がなかったことが問題だなと感じていました。女子レスリングは日本選手が世界的に強い競技ですが、今の環境のままだと人気、競技人口が広がっていかないのではないかと危惧しています。大きな世界大会の時だけではなく、日常的な応援や成長過程を見てくれるファンがいてくれることは、選手にとっても競技にとっても、とてもいいことだと思うのです。なので、そうした育成や競技の普及、継続を目指しているSports Design Labに所属していることは、私にとっても大きなことですし、競技と並行して自分がそうした環境作りに対してできることをやっていきたいと思っています。

スポーツ時や日常生活で女性であることで嫌な思いをしたことはありますか？

中村未優：正直、スポーツの現場でそういう嫌な思いをしたこともありました。私が笑って過ごせば問題にならないのだろうけど、絶対に嫌で。自分が嫌なことは認めたくないし、これを受け入れても誰もいいことないなぁと思って。私が嫌なことをそのままにしていたら、また違う人が同じ思いをするかもしれないと思うし。やってしまった人にも、嫌な思いをするっていうことをしっかり伝えていかないと、根絶というか、前に進んでいかないので。1つずつ態度や言葉にしていくことがまずは大事なのかなと思います。

ジェンダーギャップはどうしたら埋められると思いますか？

中村未優：ジェンダーギャップは今すごく話題になっていると思います。ジェンダーギャップ指数の日本の順位はとても低いですし、話題にはなっているけど解決まではいけていない。アクションを起こしていく人が増えないと課題が解決されないのは、私自身レスリングというかスポーツの中でもすごく感じていることで。みんな思っているけどなかなか言えないとか、周囲が「やめなよ」とアクションにストップをかけたりしている部分も見たり、感じている中で、自分が少しでもアクションを起こせることはやっていきたいなと思っています。1人1人ができることから始めて少しずつだと思いますし、社会の流れを変えるのはすごく難しいことだと思うので。急にガラっとは変わらなくても、私の子供や孫とかがもっと生きやすい時代になればいいなって思っています。

次世代の女性アスリートたちのためにどんな環境を整えていきたいですか？

中村未優：例えば自分が今の環境で子供を産んで復帰するのを考えた時に、すごく難しいイメージが正直あって。そうした環境は、チャレンジした人しか変えられないと思うんですよ。出産を機にスポーツを辞めるのは、その人の選択だと思うので悪くはないと思う。けど、辞めなきゃいけないってなってしまうのは、すごくよくないなって思っていて。自分は出産してもスポーツをやりたいって選択ができるように、そう選択できる未来があることが大事だなと思いますし、自分が続けたいって思った時にできる環境があるっていうのはすごく重要だし大事だと思います。自分は今の環境の中でまずはしっかり結果を出して、そうしたことも含めたサポートしてくれるチームを築いていきたいです。