ハードなワークアウト後の筋肉痛への対処:エキスパートが語るリカバリーのヒント
アクティビティ
運動後に筋肉痛が起きる理由、リカバリーを早める方法やエキスパートのアドバイス、そして痛みが怪我の可能性を示しているケースについて学ぼう。
筋肉痛に対処するための日々のリカバリーチェックリスト
- 10〜20分間の軽くて穏やかな運動
- 運動後1時間以内のタンパク質および炭水化物の摂取
- 7〜9時間の睡眠
- トレーニングを調整して、段階的に強度をアップ
- 1日を通しての水分補給
筋肉痛は筋力を高めるプロセスの中で一般的に起こるものだが、過度な筋肉痛には注意したい。筋肉に痛みを感じると、次のワークアウトのモチベーションが下がるだけでなく、運動機能や身体的パフォーマンスにも一時的に支障を来す場合がある。
運動後約24~72時間後に感じることが多い筋肉痛を、遅発性筋肉痛(DOMS)という。症状は圧痛からより深刻な痛みまでさまざまだが、研究では、運動に慣れていない人や運動から遠ざかっていた人に起こりやすいとされている。例えば、オフを過ごしてトレーニングに復帰したアスリートは、シーズンの終盤よりも痛みを感じやすくなる。
ワークアウト後の筋肉痛対策として鍵となるのが、予防だ。ただし予防することを忘れて、脚を引きずりながら家を歩き回る羽目になったとしても、痛みを軽減する方法はまだ残されている。ここでは専門家の助言を借りながら、筋肉の回復を助ける方法を紹介しよう。ただし、過剰な違和感が何度も起きるような場合には、怪我などの重い症状が進行している可能性もある。痛みが治まらなければ、かかりつけ医など医療従事者への受診を検討してほしい。
遅発性筋肉痛(DOMS)とは?
筋肉の回復を早める方法を探る前に、まずは筋肉痛が発生する理由を理解しておこう。
遅発性筋肉痛(DOMS)とは、激しい運動、慣れていない運動、またはその両方を行った後、24時間から72時間の間に発症する痛み、圧痛、筋肉のこわばりのことだ。これは、筋肉繊維の微細な損傷によって引き起こされ、その損傷が筋肉組織内の痛みを感じる受容体を刺激する。
シダーズ・サイナイによると、このような損傷は、新しい運動やエクササイズプログラムを取り入れた際に、筋肉がその種類の動きに慣れていないことが原因でよく起こるという。DOMSは、高強度の運動や、負荷をかけた状態で筋肉を伸ばすエキセントリックト運動でも発生しやすくなる。また、急激な運動量の増加や、リカバリーのための十分な時間を確保できない場合も、DOMSの原因となる。
筋肉のリカバリーを早めるには?
激しいワークアウトをすると、すぐにシャワーを浴びて横になりたいという誘惑に駆られることもあるだろう。この衝動に負けてはならないと語るのが、キャロル・マック。理学療法士であり、認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト(CSCS)の資格を持つ、CLE Sports PT and Performanceのストレングスコーチだ。リカバリーを早めるなら、代わりに緩やかな運動を行おう。
効果がある理由
「激しいワークアウトの後の筋肉痛を和らげるには、ゆっくりと体を動かすのがいちばんです」と語る彼女によれば、20分間の気軽なウォーキング、ゆっくりとしたヨガのフロー、軽いジョギング、のんびりとしたペースのサイクリングなどが効果的だという。
実践方法
ただしこれらの運動は、楽すぎると感じる程度に抑えなければならない。ここではパフォーマンスの向上は目指しておらず、筋肉にゆっくりとクールダウンを促しているだけなのだ。
例えば、『Sports Medicine』誌に発表された研究では、この種の運動はDOMSに関係する痛みを和らげるために最も効果的であることが判明しているが、その効果は一過性であるともされている。つまり、穏やかな運動は短期的には有効だが、他の手段も取り入れた方がよいということだ。
鎮痛薬を試す
炎症や痛みの緩和効果をうたうジェルやクリームには、さまざまなものがある。そのすべてに文字通りの効き目があるわけではないが、役に立つ製品も多いと語るのは、ユタ州のMountain View Pharmacyで薬剤師を務める薬学博士、ダニエル・ブライシュだ。
効果がある理由
「外用薬を用いた鎮痛療法は、痛みが集中している特定の部位に狙いを定められるという利点があります。経口薬で懸念される、全身性の副作用を最小限に抑えられますね。
実践方法
ショルダープレスによる肩の痛みや、ランニングによるふくらはぎの痛みなど、1カ所に軽い痛みがある程度なら、塗り薬がすぐに症状を和らげてくれるだろう。ひとつ残念なのは、処方の強さに応じて、1日に2~4回塗らなければならない製品が多いことです」
効果がある理由
こうしたDOMSの緩和が見られた背景には、皮膚温や筋肉温の上昇、血流やリンパ流の改善など、さまざまな要因が関係しているだろうと研究者たちは記している。また、マッサージをすれば副交感神経が活性化されやすくなるため、リラックスするまでの時間が短縮され、筋肉の緊張やこわばりが減って、筋肉痛を全体的に抑えられる。
実践方法
ワークアウトとマッサージを同じ日に行う必要はない。先述のレビューでは、マッサージで最も高い効果が得られるタイミングは、運動の約48時間後とされている。ただしスポーツマッサージを受ける際は、事前にかかりつけ医など医療従事者の判断を仰ぎ、怪我のリスクを避けるようにしよう。
回復に有効なものを食べる
運動後の食事や軽食の内容を吟味すれば、筋肉痛や疲労感を軽減するうえで、ストレッチや痛み止めクリームなどの直接的な対策と同等の効果を期待できると語るのは、カナダのマニトバ州ウィニペグで登録栄養士、スポーツ栄養の専門家として活動するステファニー・フナチューク。彼女は、タンパク質と炭水化物を組み合わせることを提案している。
効果がある理由
「たんぱく質は傷ついた筋肉の修復と生成、筋肉痛の緩和、回復時間の短縮に効果的です。炭水化物は、筋肉にエネルギーとして蓄えられているグリコーゲンを補充するために必要です。それによって次のトレーニングの質が高まり、回復が早まるでしょう」とフナチュークは言う。
実践方法
フナチュークは、運動後1時間以内にタンパク質と炭水化物を摂取することを勧めている。一般的には、たんぱく質25gと炭水化物50gを摂ればいいようだ。具体例としては、ギリシャヨーグルト1カップと果物、たんぱく質が豊富なスムージー、ツナサンドなどが挙げられるだろう。
激しいワークアウトの直後にすべきこと
激しいワークアウトの直後にタンパク質と炭水化物を組み合わせて摂取し、少なくとも10分間の簡単な運動を含むクールダウンを確実に行うことは、DOMSの緩和と持続期間の短縮に大いに役立つ。
予防戦略
DOMSが起こったときの対処に加えて、筋肉痛をある程度予防するための戦略もある。マックによれば、ウォームアップとクールダウンを必ず行うこと、そしてモビリティと可動域のトレーニングを追加することも不可欠だという。他の戦略としては、フォームローリングと段階的な強度のアップの2つが挙げられる。
ワークアウト前のフォームローリング
筋肉痛を抑えるために、ワークアウト後にフォームローラーを使う人もいるだろうが、この有効性は研究で完全に裏付けられているわけではないと語るのは、リン・ミラー博士。理学療法士であり、ノースカロライナ州のウィンストン・セーラム大学で理学療法学科長を務めている。
「エクササイズ後のフォームローラーの使用が、筋肉の成長の一部である通常の治癒過程に影響を与えたり、痛みを軽減してパフォーマンス向上を促進したりするという推測を裏付けるような研究は全く存在しません」と博士は言う。
だからといって、フォームローラーをただの流行と片づけるわけにもいかない。2021年の『Journal of Sports Science & Medicine』に掲載された研究では、ワークアウト前にローラーとダイナミックストレッチを併用すれば、とくに可動域の面で著しい回復効果が得られることが明らかになった。メイヨークリニックによれば、これは筋膜リリースという現象が促されるためだという。つまり、筋肉と関節の周囲を覆っている固い膜の弾性が向上するのだ。こうなると、体を動かす際の制約は小さくなる。
進歩は着実に
さほど激しくないトレーニングの後でも、ワークアウト後にはいつも筋肉痛になるという場合には、ワークアウトの進度が速すぎる可能性があるとミラーは言う。回復を強く意識しながらトレーニングプランを調整すれば、筋肉の回復を促すことができる。また、本来の意図に沿うように、ワークアウトの強度を再調整しておこう。言い換えれば、休養日は休養に徹し、激しいワークアウトは激しく行うということ。目標は、ワークアウトで常に体を酷使するのではなく、体に回復時間を与えてやること。
「運動後の筋肉痛を抑えつつ、回復力を高められると証明されている唯一の方法は、運動を段階的に進めていくことです」とミラーは言う。
では、トレーニングで無理ばかりしていないかを判断する方法はあるのだろうか。マックによれば、ワークアウトをしていない間でも疲労感を覚えたり、イライラが募ったり、あまり眠れなかったり、緊張感やストレスを感じたり、モチベーションが減退したりするといった、痛み以外のオーバートレーニングの徴候が表れるはずだという。他にも座り心地が悪くなったり、腕を頭よりも高く上げにくくなったりと、痛みのせいで体の動きに支障が生じることもある。
どんな時に診察を受けるべきか
ある程度の痛みは誰にでも起きる当たり前のことで、激しいワークアウトの後であればなおさらだ。特にスクワットのような左右対称の動きでは、両側で同じような鈍い痛みを感じることが多く、1~2日後にピークに達することもあるが、その痛みは動くことで軽減できることが多い。
ただしマックによれば、普通ではない痛み、なかでも、鋭くズキズキする痛みには注意が必要となる。疲労骨折やねんざ、その他の使いすぎによる怪我に多く見られる症状であるため、医師の診察を受けた方がよいという。痛みや筋肉痛が治らず、動くと良くなるどころか悪化する場合は、医師に相談しよう。
よくある質問
DOMSの一般的な継続期間は?
DOMSは通常、運動後24~48時間でピークに達するが、72時間を過ぎても続くことがある。その後、痛みは徐々に軽減され、解消される。
乳酸は痛みを引き起こす?
運動後の筋肉痛は、乳酸ではなく、筋肉繊維の微細な損傷によって引き起こされる。クリーブランドクリニックによれば、乳酸が筋肉の痛みや灼熱感の原因であるというのはよくある誤解であり、実際には、この種の酸は筋肉からすぐに排出されるため、損傷を引き起こすことはないという。
筋肉痛があるときでもワークアウトをすべきか?
痛みが軽い場合は、中程度の強度の運動をすることで、痛みやこわばりを和らげることができる。しかし、痛みが激しく、動きが制限される場合は、もっとリカバリー時間を取ってからワークアウトを再開しよう。
筋肉痛がケガの兆候となるのはどんな時?
通常のDOMSは鈍い痛みのように感じられ、動くことで改善する傾向がある。運動にはこわばりや圧痛を和らげる働きがあるからだ。一方で、鋭い痛みや動くと悪化する傾向がある、または時間の経過とともに徐々に痛みが軽減するのではなく強くなっていく場合は、怪我の兆候を疑おう。