ストレスを減らす食生活

Coaching

胃と幸福感は直結している。どんな食べ物や習慣が、至福の道へと通じているのだろうか。

最終更新日:2021年8月16日
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栄養のエキスパートが教えるストレスを減らす食事法

たとえば、週末の休暇から家に帰ってきたとする。72時間に及ぶ旅行中、何でも好きなものを食べた。それは仕方のないこと。その時は気分が良かったのに、今は不機嫌で倦怠感があり、体がこわばっている。あんなにエネルギッシュだったのに、いきなり元気がなくなった理由は月曜日が近づいてきているという現実だけだろうか?


科学的に考えると、恐らくそうではないはずだ。なぜなら、胃腸系(すなわち腸)と心は、ビヨンセとそのバックダンサーたちのようにぴったりシンクロしているから — つまり食べ物が女王蜂であり、それに反応するのが体という関係だ。

「私たちが食べるものはすべて、体が認識するもの(簡単に消化され、正常な機能を促すもの)とそうでないもの、つまり体が認識しないもの(胃の不快感を招く恐れのあるもの)とに分かれます」

キャサリン・ヘイズバート
認定栄養コンサルタント

「食べるストレス」とは

脳は認知機能の司令塔である。たとえば、教師や上司から指示されたタスクを思い出してみよう。それを完遂すると、どんな感情が残るだろうか。食べ物は、良い影響も悪い影響も与える。「食べ物が腸にたどり着くと、脳にメッセージが送られ、メンタルパフォーマンスと幸福感を強化、あるいは悪化させます」こう語るのは、キャサリン・ヘイズバート(ブリティッシュコロンビア州バンクーバー在住の認定栄養コンサルタント兼認定ナチュラルシェフ)。

もっと具体的に言うと、私たちが食べるものはすべて、体が認識するもの(簡単に消化され、正常な機能を促すもの)とそうでないもの、つまり体が認識しないもの(胃の不快感を招く恐れのあるもの)とに分かれる、とヘイズバートは説明する。ケーキ、パン、チョコレートピーナッツバター風味の「栄養補助食品」や高度に加工処理された食品などは、体内に入ると、体を検出モードに切り替える要因となる。そして体はどうにかしてそれらの成分を分解し、有効に活用しようとする。このプロセスはしばしば炎症を引き起こしたり、全身にストレスを与えて、交感神経系(または闘争・逃走反応)を優位にする可能性があるという。

キャリー・デッカー(オレゴン州ポートランドの自然療法医で胃腸機能障害の専門家)によると、その炎症は腸と脳の間のコミュニケーションにも影響を及ぼし、それぞれの機能の働きを妨げるとのこと。

こうした反応性症状は一時的なもののように聞こえるかもしれないが、もしこのような展開を引き起こす食事が続くと、慢性的なストレスや炎症を引き起こしかねない。そして気分の落ち込み、不安および過敏性、潜在的な免疫系の低下につながっていく恐れがあるとデッカーは指摘する。それは避けたい事態だろう。

おいしい食べ物にひそむ真実

幸いなことに、ストレスを軽減する食べ物というのは存在する。デッカーが例として挙げるのは、自然食品や、あまり加工されていない栄養価の高い食品。新鮮な果物や野菜、植物性または動物性タンパク質(魚、鶏肉、肉、豆)、全粒穀物(キヌア、玄米、オート麦)、ナッツをはじめとする健康的な脂肪など、文字通り自然の中で育っていた、あるいは生きていた姿を想像できる食品群だ。

これらの食品群は、「この新しく入ってきた食べ物は一体何?」と体が驚いて反応するような「炎症」を引き起こしたりはしない。それだけでなく、腸と脳が調和して機能するための穏やかな環境を体内に作り出す、とヘイズバートは語る。その結果、胃が心に悪影響を及ぼすことはなく、その逆もない。

栄養のエキスパートが教えるストレスを減らす食事法

メンタルウェルネスに良く効く食べ物

仕組みが大体分かったら、絶好調の気分をキープするための食事を具体的に見てみよう。ケーキ断ちは不要だ。

1. 定期的に食べよう。

不規則な時間に食事をしたり、食事をとらずに長期間を過ごしたりすると、血糖値が不規則に上昇してストレス反応を刺激し、不安や過敏症を引き起こす可能性があるとデッカーは説明する。バランスのとれた食事を1日2-3回、空腹のときは健康的なスナックを摂って、4、5時間ごとに何かを食べるのが理想的だとのこと。食物繊維、健康的な脂肪、タンパク質が豊富で、良質な炭水化物を含む食品を摂ることを目指そう。全粒小麦のイングリッシュマフィンにアーモンドバターを塗ったもの、無糖のギリシャヨーグルトにドライクランベリーと、今人気のカリカリのそば粉をのせたものなどがおすすめだ。

2. 果物と野菜をたっぶり摂ろう。

これらが食品ピラミッドの主要な定番であるのにはちゃんと理由がある。デッカー曰く、炎症と戦うのに役立つ抗酸化物質が豊富に含まれている果物や野菜は、腸と脳の間のコミュニケーションを改善する。その結果、より幸せで安定した気分を促して、ストレスレベルを下げるのだという。さらに、果物や野菜のほとんどにはプレバイオティクスが含まれており、腸内の炎症を抑える働きをする善玉菌を促進すると考えられている。

野菜や果物を食生活に追加するには、普段、お椀一杯食べている米を葉物野菜と入れ替えてみたり、スクランブルエッグに赤ピーマンを混ぜたり、野菜のスナック菓子の代わりに、手のひら一つ分のニンジンやブドウを摂ったりしてみよう。

3. 添加糖を避けよう。

72時間の贅沢三昧の後、一気に気分が悪くなったとすれば、糖分が大きな役割を果たしているのは間違いない。『Scientific Reports』の調査によると、添加糖は、加工されたパッケージ食品や飲料によく見られ(果物などの自然食品に含まれる天然糖とは異なる)、抑うつ気分と関連がある。デッカーによると、血糖値の不快な急上昇こそが主犯格であり、しかも糖は腸内の悪玉菌に栄養を与えている可能性があるという。

解決策はいたってシンプル。コーヒーやお茶を飲むときには添加糖の摂取を減らし、デザートにはシャーベットを食べる代わりにベリー類を食べるなどして、できるだけ添加糖摂取量を大幅に減らしてみよう。アメリカ心臓協会によると、女性の場合は約25グラム、男性の場合は36グラムという1日の推奨量を下回るのが理想だ。

4. 脂肪とうまく付き合おう。

ヘイズバートによると、脳の60%近くは主要栄養素の1つである脂質でできている。そのため、健康的な脂質を摂ることで、認知能力および感情コントロールの向上を促すことができるという。

アボカド、ナッツ、種子(チアや亜麻など)、鮭やイワシなどの冷水魚を選ぶことをヘイズバートは勧めている。逆に、炎症の原因となりやすいトランス脂肪や酸化脂肪(揚げ物や高度加工食品に含まれる)は避けるように。

栄養のエキスパートが教えるストレスを減らす食事法

5. アダプトゲンのトレンドに乗ろう。

アダプトゲンとは一体何だろう?流行りものだと思うかもしれないが、実は何世紀も前から存在する。デッカーによると、アダプトゲンとはさまざまな植物やハーブ(主に根、茎、きのこ)に含まれる天然化合物。集中力やエネルギーを高めたり、あるいは体の状態を落ち着かせたりすることにより、ストレス要因に対する体の反応を調節するのに役立つと考えられている。

アダプトゲンは、チンキ剤、粉末、錠剤、さらにはおしゃれなラテなど、さまざまな姿になっている。ウコン、霊芝、アシュワガンダ(ロディオラ)という名称は聞いたことがあるかもしれないが、オタネニンジンやイワベンケイなど、耳慣れないものもある。デッカーによると、アダプトゲンを食生活にとり入れることで、メンタル状態や気分が向上したというデータもあるという。近くの自然食料品店やオンラインで、どのタイプが自分に合う効能を持っているか調べてみるとよいかもしれない。アダプトゲンはすべて天然なので害を及ぼす可能性は低いが、健康上の懸念がある場合は、医師に相談することをお勧めする。

6. 忍耐強く。

心と体の健康は一日にして成らず。個人の日々の積み重ねによって得られるものだ。ある日思い立って食生活を変え、次の日に結果が出るなどと期待してはいけない。しかし、前述のアドバイスに沿った食事法を続ければ、「やがて、一日を通してよりバランスの取れたエネルギーを感じ、良い気分で一日を過ごせるようになるはずです」とヘイズバートは言う。

2週間、1か月、6週間後に自分自身でチェックするようにリマインダーを設定してみよう。朝起きたときの活力は少し増しただろうか?何かがうまくいかないときに、より忍耐強く対応できるようになっただろうか?夜になると悲観的な思いに囚われてしまうことは減っただろうか?日曜日に気分が落ち込むことはなくなっただろうか?こういった変化がもし現れてきたら、それはあなたが着実に前進していることの証だとヘイズバートは言う。

やがて、あなたにとっての「楽しい週末」は、心から気分を良くしてくれる食べ物であふれるようになるかもしれない。デザートを脇役として。

文:ブルック・スレード
イラスト:ジョン・クラウス

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公開日:2021年8月16日

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