女の子をスポーツに夢中にさせよう

Coaching

スポーツには男女格差が確実に存在する。しかし、励ましを必要としている女の子が身近にいるなら、これから紹介する戦略が役に立つだろう。

最終更新日:2021年10月15日
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娘にスポーツを勧める理由とその方法

米国に女性の副大統領が誕生した2021年。世界有数の大手銀行に女性のCEOが誕生。アカデミー賞の監督賞には2人の女性がノミネートされ、そのうちの1人が受賞した。女性の未来は明るい。だがスポーツは例外だ。

さまざまな課題

セリーナやシャレーンといった女性アスリートがそういった現状を打破しつつあるものの、実際のところ、女性アスリートは過小評価されている。女子スポーツ財団(WSF)による7歳から13歳までの女の子に関するレポートによると、女の子は男の子よりもスポーツを始めるのが遅く、スポーツをする10代の女の子の割合は男の子よりも15%少ない。また、スポーツを始めたものの、14歳までに辞めてしまう女の子の割合は男の子のほぼ倍に上る。「Canadian Women and Sport」の最近のレポートによると、それ以降もスポーツを続けた女の子のうち、3人に1人が10代後半までに辞めてしまう一方で、同時期までにスポーツを辞める男の子はわずか10人中1人だ。

これは一体どういうことだろう?女の子(赤ちゃんから大学生まで)が運動競技で輝かしい栄光を手にするには、女性の身体的な要素から、女性の可能性についてのステレオタイプに至るまで、さまざまな要素が立ちはだかっている。

例えば、生物学的要素。筋肉が成長し、声が低くなり、胸元に毛が生えてくるにつれて、男の子は自信をつけていく。一方で、女の子は胸が膨らみ、生理が来て、ホルモンが活発になってくるにつれ、自意識が高まり、自分に自信を持てなくなる。それが、スポーツへの参加意欲に影響を及ぼしてしまう。そう語るのはマリー・フライ博士(カンザス大学スポーツおよびエクササイズ心理学研究室ディレクター)。比較と自信喪失の温床となるソーシャルメディアは、女の子を(そして男の子も)センターコートではなくサイドラインに向かわせてしまう、と博士は述べている。

家族や、男女を巡る固定観念も影響している。一般的に、女の子とスポーツとの初期の関係には、両親(もしくは親の役割を果たす人物)が最も大きな影響を及ぼし、多くの家庭では女の子がスポーツに参加することが男の子ほど重視されないことも多い。そう説明するのは、カレン・イソクソン=シルバー(WSF、調査・研究部門副理事)だ。「小さな子どもがいる家庭では、父親が娘よりも息子とキャッチボールをするのが一般的です」と彼女は指摘する。家族からの支援がないとなると、女の子は小さいうちから、またはまったくスポーツを始めることができない。

さらに文化的な要素もある。残念なことに、南カルフォルニア大学とパデュー大学の調査によると、テレビで放送されるスポーツのうち、女性スポーツは平均で5%に過ぎず、残る95%を男性スポーツが占めている。また、多くのスポーツにおいて、女性アスリートは男性アスリートよりも給与が15-100%低い。こうした状況は、特に影響を受けやすい子どもたちに「女性アスリートは男性アスリートほど重要ではなく、価値も低い」というメッセージを送ってしまうと、イソクソン=シルバーは言う。女の子はスポーツを途中で辞めてしまう確率が高いため(そして女性コーチが少ないため)、尊敬すべき同性のアスリートが男の子ほど多くなく、そうしたサイクルが永続してしまうのだと、彼女は説明する。

「小さな子どもがいる家庭では、父親が娘よりも息子とキャッチボールをするのが一般的です」

カレン・イソクソン=シルバー
WSF、調査・研究部門副理事

エキスパートによる解決策

スポーツを楽しむ子どもたちには、さまざまなメリットがある。最近の「Girls and Sports Impact Report」によると、アスリートでない女の子と比較して、スポーツをする女の子はどの年齢でも自信があり、成績の平均値も高い。他の調査でも、若者のスポーツには、心身の健康増進だけでなく、より肯定的な身体イメージ、社会的なつながりを結ぶ機会の増加、関係構築スキルの強化と関連があることが示されている。さらに当然ながら、「スポーツをする女の子は生涯にわたって活動的な傾向があり、スポーツをすることで自らを全般的により健康的な将来に導くことができます」と、イソクソン=シルバーは言う。そう、スポーツは重要なのだ。

私達は、生活の中で女の子により良い働きかけをする役割を担っているし、実際それは可能なこと。しかも、それほど難しいことではないのだ。まずは、女の子のスポーツ参加を促してスポーツへの意欲を高めるこのプレイブックを参照し、共有することから始めよう。

娘にスポーツを勧める理由とその方法

協力的な環境を作ろう。

あなたがスポーツやエクササイズに参加し、推奨することによって、スポーツやエクササイズに対する女の子の姿勢を大きく変えることができる。そう語るのはメーガン・バートレット(「Center for Healing and Justice Through Sport」創立者)。Nikeの「Coaching Girls Guide」の作成にも参加したバートレットによると、大人が積極的に参加すればするほど、そしてアクティビティに関して肯定的な言葉を使えば使うほど(「今日も走るのが楽しみ!」など)、女の子自身がスポーツに対して前向きなイメージを構築しやすくなるという。「女の子と一緒にスポーツをすることも重要です」と、フライ博士は付け加える。女の子が3歳でも13歳でも、どのようなアクティビティをするか選ばせて(そうするとより楽しめる)、一緒に取り組もう。

そして女の子が身体を動かしやすいスポーツブラ、シューズ、ウェアなど、適切なスポーツ用品を用意しておくこと。できるだけ多くの練習や試合に足を運んで応援してあげたり、高校生や大学生の試合に連れて行き、クラスや友だちについての話題を出すようにスポーツについて話したりすることもおすすめだ。こうしたあらゆるステップによって、女の子がスポーツのことを自然な、楽しい生活の一部として考えるように促し、スポーツを続ける自信を与えることができると、イソクソン=シルバーはアドバイスする。

真摯に向き合ってくれるコーチを見つけよう。

「女の子は歓迎され、サポートを受け、評価されていると感じないと、そのスポーツが大好きでも辞めてしまうことがあります」と、イソクソン=シルバーは言う。彼女によると、女の子を選手としてだけでなく一個人として扱い、オープンに話せる関係を築き、女の子が参加し挑戦していることを外に向けて評価してくれるコーチを見つけることで、成功に向かう環境を整えることができるのだという。また、勝つことがすべてではないと考えるコーチを見つける必要もある。WSFが女の子を最も成功に導くコーチのタイプについて調査を行ったところ、勝つことだけではなく、楽しさやスキルの育成を重視しながらチームに挑戦させるコーチがトロフィーを獲得することがわかっている。

学校や地域で特定のプログラムに興味があるなら、そのチームに子どもを参加させている、または参加させていた保護者から近所や地域のオンライングループで話を聞いてみることをフライ博士はすすめている。「自分で練習を見に行って、女の子たちがどのように迎えられ、練習中、コーチが女の子たちとどのようなやり取りをし、どのように締めくくっているか確認してもいいでしょう」と語るのは、ビブ・ホルト(「Youth Sport Trust International」代表)。コーチと話ができればなおいい。コーチとのやり取りから、女の子とどのように向き合っているかがはっきりとわかる、と「Nike Coaching Girls Guide」の作成にも参加したビブは付け加える。

ライバルと健康的な関係を構築しよう。

チームメートや対戦相手よりもいいパフォーマンスを求められることで女の子がサポートよりも圧力を強く感じると、スポーツから離れてしまうこともある、とフライ博士は注意を促す。そのため、他人ではなく自分自身と向き合うように導く必要がある。

「他の人がどのようなプレーをするかはコントロールできないけれど、自分が毎日どれだけ一生懸命にやるかは完全にコントロールできるということを言い聞かせましょう」とフライ博士。サーブやストロークの改善に取り組むなど、個人的な目標を設定するように促して、自分の進歩を確認できるようにしよう。小さな改善であっても祝福してあげることで、実際に取り組めば報われ、誇りを持てるということを理解できるようにする必要がある。

「本当に一生懸命にやっているね」、「上達していてすごい」といった、結果ではなく進歩を強調する言葉を掛けることが重要だと語るのは、ダイアナ・クタイア(「Coaching Peace Consulting」創業者)。こうした言葉を掛けることで、プレーすることがさらに楽しくなり、ストレスを軽減することができる。

娘にスポーツを勧める理由とその方法

意識して価値を認めよう。

子どもがスポーツに夢中になる決め手は、自分がチームの重要な一員であると感じられるかどうか。これは特に女の子に関して言えることだ。「試合での貢献を認められていると感じているのであれば、そのスポーツのスキルが高いかどうかは重要ではありません」と、イソクソン=シルバーは言う。

適切なコーチはすでにこういったことをしているが、そうした認識を確認することで、さらに強化することができる。他の子が彼女をどんなに頼りにしているか、ピンチのときでも彼女の熱意によってどんなに雰囲気が変わっているかを再認識させるべきだと、イソクソン=シルバーは提案する。「上手くいっているときだけでなく、苦しんでいるときもその頑張りを認めることで、コーチがパフォーマンスではなく、彼女自身のことを気にかけていると示すことが重要です」とクタイアも付け加える。

女の子の考え方を長期的に変えていこう。

一部の調査結果では、女性は男性よりも完璧主義になる傾向があることを示しており、そうした傾向は子どものときから始まっているとフライ博士は言う。試合中の反則行為であれ、ボールを落とすのであれ、間違いを犯すことは普通であるだけでなく、学習し向上するために欠かせないことだと女の子に教えることが重要だ。

最初のステップとして、女の子がちょっとしたミスを大胆に乗り切れると信じられるようにサポートしよう。「勇気」という言葉を口癖にして、女の子やチームメートが何か新しいことに挑戦したり、リスクを取ったりする度に(遠くからシュートを打つなど)そうしたプレーを称賛するべきだとバートレットは言う。

間違えたときはそのことについて話をしよう。ただし、より大きな視点で話す必要がある、とホルト。「他に20のことを適切にやっていたとしても、人は自分の間違いについてくどくどとこだわりがちです。それは子どもであっても同じこと」と彼女は言う。「間違いについて反省し、それを成長のチャンスとして活かしたうえで、これまでにしたすべてのよいことに意識を向けるように励ますべきです」また、コーチ自身がちょっとしたヘマをしたら、それを自分で指摘して、そんなにたいしたことじゃないと繰り返すのも効果的だ。

最後に、女の子がコーチと本当に個人的なつながりを持っている限りは、辞めさせてはいけない。プレーする時間が十分に取れない、チームメートよりもスキルが劣っているように感じる、そのスポーツがあまり好きでないなど、大半の理由は、勝つことの意味を見直すことで解決できるとバートレットは言う。「これまでに上達したスキルや新たにできた友だちのことを強調し、チームとともにここ数週間で達成できたことに関連する目標を設定できるようにサポートしましょう」とアドバイスする。

女の子が後に別のアクティビティを選択したとしても、ワンシーズンを通して見届けることで、忍耐力や自己効力感が得られるとバートレットは言う。そうした粘り強い努力が、統計データとスポーツの未来を永遠に変える要素となるだろう。

文:シャーロット・ジェイコブス
イラスト:ケシア・ガブリエラ

レベルアップしよう

子ども、特に女の子を継続的にスポーツに参加させるためのアドバイスについては、Nikeが「Made to Play」の活動の一環として共同作成した「Coaching Girls Guide」を要参照。また、青少年スポーツを専門とする心理学者であり、アスリートでもあるジム・テイラー博士について取り上げたボッドキャスト「TRAINED トレーニング最前線」の特別編もあわせて聴いてみよう。

公開日:2021年10月7日

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