運動がメンタルヘルスを高める仕組み:科学的に裏付けられたメリットを解説

アクティビティ

エクササイズには、不安感やストレスを軽減することで気分を高める効果があります。

最終更新日:2026年1月23日
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運動がメンタルヘルスに与えるメリットとは?

エクササイズは、メンタルヘルスに対して確実に好影響をもたらします。科学的な検証臨床試験 において実証されているほか、実体験にまつわるエピソードも裏付けます。運動を始める前よりも気分が改善したなら、それが運動の効果だといえます。メンタルヘルスが改善することは、生物化学的にも説明可能です。

実際、運動はメンタルヘルス改善に大きな効果が見込まれ、一番身近な手段でもあります。不安や抑うつの症状を軽減し、気分、睡眠、集中力、ストレスへの回復力が高まります。

概要:運動がメンタルヘルスにもたらす効果

  1. 運動をすることで、ストレス、不安、抑うつを軽減できる場合があります。
  2. 心と体は相互につながっているため、互いに影響しあいます。
  3. 短時間の運動でも効果があります。

「運動は、あらゆる面で安定性の向上につながる可能性があります 」と語るのは、認定心理学者でパフォーマンスコーチの」ステファニー・レチーチ氏です。「不安な状態を落ち着かせる一方で、うつ病に悩む人を元気づけることができます」。活動レベルを高めることは、血圧や体重などの身体的健康の指標を改善するうえでも役立ちます。

エクササイズはメンタルヘルスにどんな効果があるのでしょうか?気分を高める戦略としてエクササイズを利用することで、体の内側から外側へと改善していくことは可能だろうか?

運動がメンタルヘルスを改善するメカニズム

1. 運動が生理機能に与える影響

神経系:

交感神経(闘争・逃走反応)と副交感神経(休息と消化)は、体内で対立して働いていますが、運動はそれを調節し、最終的には不安を抑制する効果があります。最初は、激しい運動によって交感神経系が活性化するかもしれませんが、中程度の運動やクールダウン中には 副交感神経系 が活性化し、心拍数と血圧を下げ、筋肉をリラックスさせます。

ホルモンと神経伝達物質:

エクササイズを始めると、体と脳に変化が起こります。心拍数が高まり、血流が速まり、酸素は筋肉や重要な臓器へと運ばれ、脳はトレーニングの刺激に応じてシフトする。

ホルモン、神経伝達物質、その他の分子が影響を受けます。エンドルフィン(鎮痛剤として作用し、痛みの知覚を軽減する幸福ホルモン)は、ドーパミン(喜びとモチベーションを促進する)、セロトニン(気分を安定させるホルモン)、脳由来神経栄養因子(BDNF)などと組み合わせて作用します。

ストレス、代謝、炎症などをつかさどるホルモンであるコルチゾールについては、「メタアナリシスでは、身体的に活動的な人ほど、より健康的な日中のコルチゾールリズムを持つ傾向があることが示されています」と、グレゴリー・ゴードン(MA、CSCS、MATRx)は述べています。「また、標準的なストレステストに対するコルチゾールや心拍数の反応が低下するか、より迅速に回復するなど、より『効率的な』ストレス反応を示しています。 そのパターンは、より良い長期的な健康に関連しています」

効果:

定期的な運動は、エンドルフィンの分泌を促進し、他の重要な生理学的な反応とともに、幸福感やモチベーションを高め、痛みを軽減します。

2. 運動が神経可塑性に与える影響

BDNFは、神経可塑性とリンクしている。つまり、脳は自らを改善する能力を持っているということである。実際、BDNFは神経発生、つまり新たな脳細胞の成長プロセスにおいて重要な役割を果たす。

Frontiers in Neuroscience』に掲載された 2018年の研究では、研究者は「神経発生は認知能力を大幅に改善し、神経変性現象に対する保護能力を高める」と指摘しています。

BDNF、神経可塑性、神経発生は、メンタルヘルスをどのように改善するのでしょうか?神経可塑性が意味するのは、脳は変化できるということである。つまり、遺伝的にメンタルヘルス障害の疑いがあったとしても、新たな神経経路を形成することで自ら調整し修正する能力が脳には備わっている。

リスクの高い仕事、別離、経済的困窮など、生活の中のストレス要因はすべて神経可塑性に影響を与え、 抑うつや不安感へとつながる 可能性があります。

しかし、これは逆方向の可能性も示唆している。日々の習慣、行動、思考パターンを調整することで、新しい神経経路と脳の継続的な変化を生み出してメンタルヘルスを改善し、 ストレスレベル を下げることができるのです。

効果:

定期的な運動習慣は、脳細胞の成長と神経接続を助けるタンパク質であるBDNFを増加させ、認知能力を高め、うつ病や認知機能低下を防ぎます。

3. 運動が脳の健康を促進する仕組み

血液と酸素流量が増加するだけでも、メンタルの改善をもたらすには十分である。血液は、高機能な脳に不可欠な酸素と栄養素を運搬します。酸素が行き渡った脳では、特に海馬が活性化する。海馬とは、 記憶や学習と関連する脳 の一領域であり、意欲、気分、喜び、痛みなどをコントロールする働きのある領域です。

2015年にマウスを対象とした 研究 では、大脳の酸素レベルの低下がうつ病やうつ病症状の予測因子であることがわかりました。これは悪循環であり、うつ病も 酸素レベルの低下を引き起こします。脳に酸素が足りなくなると、脳細胞の機能が低下し、細胞が死んでしまう可能性もある。ある調査でもこの点を支持しており、メンタルヘルス障害は脳内物質の喪失と関連していることを明らかにしている。

メリット:

身体的な健康レベルが向上すると、体内の血液と酸素の流れが増加し、 脳の健康 が改善され、認知機能低下や認知症のリスクが軽減されます。

4. 運動が心理に与える影響

人はアクティビティを最後までやり遂げることで、自分の能力に自信を持つようになる。エクササイズは、セルフケアのためのツールとしてだけでなく、自分に自信を持ち、能力を確信できるようにするためのツールとしても利用できる。

『Neuropsychiatric Disease and Treatment』(2016年)に掲載された 臨床試験では、身体活動は自尊心、体力の自覚、身体的イメージと直接的に関連することが明らかになっています。一方、興味深いことに、ボディマス指数(BMI)との明確なリンクは存在しなかった。

このことが示すのは、エクササイズおよび身体活動から恩恵を受けるために、特定の体重である必要はないということである。つまり、どんな経験レベルの人でも、定期的なエクササイズを続けることで、自尊心や自信を築くことが可能なのだ。エクササイズは身体的な幸福感を高め、あなたが暮らす世界を変化させる。

「活動に没頭しきっているとき、私たちは完全にその場に集中し、判断や自己意識から解放されます」と レチッチ氏 は言います。「運動を通じて到達できるこのマインドフルな状態は、心と体のつながりを育みます。マインドフルネスは、ストレスや不安、うつ病の軽減、感情調節の改善、集中力の向上、反応性の低下、人間関係の強化など、数多くの健康改善につながっています」

効果:

運動をおこなうことで自信やマインドフルネスが高まり、その結果、ストレスや不安を軽減し、集中力を高めます。

身体活動にメンタルヘルスにもたらす効果

沈んだ気分、ネガティブな思考、心理的な不安、過度の恐怖や心配、やる気の不足、集中力の低下や疲労。すべて精神疾患の兆候と考えられると専門家は指摘しています。しかし定期的に体を動かすことで、不調の兆候を緩和できる場合があります。

負荷が軽めの運動を好む人でも効果を実感することができます。『International Journal of Preventive Medicine』に掲載された 研究では、4週間にわたる試験の結果、ヨガはメンタルヘルスの不調を劇的に低減し、試験対象となった女性の知覚されるクオリティオブライフを高められることが報告されました。

不安やうつ病に最適な運動の種類

最良のエクササイズは継続してできるものです。また研究によると、屋外でのエクササイズやグループでのエクササイズは、メンタルヘルスへの効果を高めることがわかっています。

PNASに掲載された2015年の 研究では、自然の中で90分間のウォーキングをした参加者グループは前頭前皮質の活動がより低いことがわかりました。この脳の領域は、不安の兆候、ネガティブ思考と関連する領域である。

Medicine & Science in Sports & Exercise 』に掲載された 研究 では、グループで行う有酸素運動は、精神的な回復力と全般的な精神的健康を向上させることがわかりました。これは、エクササイズによる生物化学的な恩恵と社会的つながりの相乗効果によるものと言える。

ランニングクラブやグループフィットネスクラス、友人とのウォーキングなどを試してみてください。

メンタルヘルスに効果をもたらすために必要な運動量と頻度

アメリカ心臓協会によると、週に約150分の適度な運動が理想 のようです。さらに、ゴードンは週に2〜3日のレジスタンストレーニングを推奨しています。

「現実的に、ほとんどの人は週にこれだけの運動量に近づくことはありません。「ですから一日にすべきことをやりながら、できる範囲で多くの運動をすることが目標です」

よくある質問:

メンタルヘルスに最適な運動は?

メンタルヘルスに最適となるのは定期的にできる運動です。ジョギング、ウォーキング、サイクリング、ダンスなどの有酸素運動は、不安やうつ症状を軽減することが科学的に証明されていますが、何よりも大切なことは、安定したルーティンを作ることです。

不安やうつ病に対処している場合は、5〜10分のウォーキングなどから少しずつ始めてもいいでしょう。

運動で気分が良化するまでに要する時間は?

毎日30分間の適度な運動を行うことで、疲労が軽減され、活力が向上することが示されています。効果がすぐに現れるわけではなく、目に見えるまでには数週間から数か月かかることが一般的です。

運動は不安症に効く?

運動は健康的なライフスタイルの重要な要素であり、ストレスを軽減し、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質を増加させ、回復力を構築することで、最終的には不安を軽減できます。

しかし、運動だけでは不十分な場合があります。運動は有効な手段の1つであって、メンタルヘルス医療に代わるものではありません。不安やうつ病に悩んでいる場合は、認可を受けたセラピストや精神科医に相談することが重要です。緊急の場合は、自殺・危機ライフライン(988)に電話することもできます。

ウォーキングだけでメンタルヘルスの向上に十分ですか?

はい、アメリカ心理学会もウォーキングは適度な運動の1つの方法だとしています。週に150分の適度な運動を推奨されているものの、それに満たなくても効果は期待できます。

過度の運動はメンタルヘルスに害を及ぼす可能性がありますか?

はい。何事もそうですが、やりすぎることもあるでしょう。「適切な進歩 や回復なしに、繰り返し身体に負担をかけることは、必然的に組織の損傷や怪我につながります」とゴードン氏。

過度の運動は、ストレス、不安、怪我につながる可能性があります。休息は、適切な食事摂取や水分補給とともに、健康維持のための習慣の重要な部分です。

うつ病のために運動する意欲が湧かない場合の対処法は?

「運動に関して深く考えすぎる必要はありません」とレチッチ氏は言います。「余暇の過ごし方という考え方に立ち返ることが不可欠かもしれません」

やる気が出ない場合は、運動を楽しむ方法を見つけましょう。たとえば、エクササイズ中に音楽を聴いたり、読書をしたりするなど、他のアクティビティを取り入れてもいいでしょう。また、いくつかの種類の運動を試して、継続的にできるものを見つけるのも方法です。

無理に大きな計画を立てるのではなく、小さなことから始めて、維持できる習慣を身につけましょう。目標は、運動を長期的に生活の一部にすること。効果を実感するまでには、習慣を身につけるのに時間がかかる場合があります。

運動がメンタルヘルスに与えるメリットとは?

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公開日:2026年1月23日

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