エクササイズがメンタルヘルスにもたらすメリットとは?

健康とウェルネス

エクササイズには、不安感やストレスを軽減することで、気分を高める効果がある。

最終更新日:2022年6月29日
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運動がメンタルヘルスに与えるメリットとは?

COVID-19のパンデミックは、私たちの生き方と生活を一変させ、メンタルヘルスに悪影響をもたらした。 不安、抑うつ、ストレスを感じる割合が高まることとなったのである。 現代人である私たちは、メンタルヘルスの不調と抑うつの兆候に悩まされている。

そのメンタルヘルスに長期的かつ確実なメリットをもたらすのがエクササイズである。 そのことは科学的な検証や臨床試験において実証されており、また、そのような話を聞くことも多々ある。 あなたが最後にワークアウトを行ったのはいつだろうか? そして、どのような気分だっただろうか? ワークアウトをやり遂げた満足感だけでなく、精神的な変化も感じられたのではないだろうか。 それこそがエクササイズの効果だ。 精神の健康状態が良好になったことは測定可能であり、生物化学的にも説明できる。

身体活動の最大の利点は、誰にでもできることにある。 どんな種類のエクササイズにも意義がある。 身体活動は、副作用や警告表示を伴わない療法と言える。 定期的なエクササイズは、瞑想など他の療法と組み合わせることも、単独で行うことも可能である。 エクササイズの計画は、充実した社会的経験となり、あるいは屋外へと出かける機会となるだろう。 アクティビティのレベルを高めることで、血圧や体重といった身体的健康の指標は改善される。

身体活動のメリットは多岐に渡り、1つの記事ですべてを取り上げることは難しいほどである。 果たして、エクササイズがメンタルヘルスにもたらすメリットとは何だろうか? 気分を高める戦略としてエクササイズを利用することで、体の内側から外側へと改善していくことは可能だろうか?

エクササイズによって気分が良くなる理由

  1. 1.気分が良くなる化学物質

    快感ホルモンの一つに、エンドルフィンがある。 このホルモンは、ドーパミン、セロトニン、脳由来神経栄養因子(BDNF)など、他の神経伝達物質と相互に作用する。 エンドルフィンはパズルのピースのような存在なのだ。

    エクササイズを始めると、体と脳に変化が起こる。 心拍数が高まり、血流が速まり、酸素は筋肉や重要な臓器へと運ばれ、脳はトレーニングの刺激に応じてシフトする。

    そして、気分が良くなる化学物質が生成され、脳内に放出されることで効果がもたらされる。 例えば、放出されたエンドルフィンには鎮痛効果がある。 つまり、痛みの感覚の緩和に効果を発揮するのである。 エクササイズは過酷で苦痛を伴う場合があり、最後までやり遂げることはある種の挑戦と言ってよい。 エンドルフィンは、満足感と肯定感を引き出すことで、体の限界を超えるのを促すのである。

  2. 2.脳の継続的な変化

    BDNFは、神経可塑性とリンクしている。 つまり、脳は自らを改善する能力を持っているということである。 実際、BDNFは神経発生、つまり新たな脳細胞の成長プロセスにおいて重要な役割を果たす。 『Frontiers in Neuroscience』に掲載された2108年の研究では、研究者は「神経発生は認知能力を大幅に改善し、神経変性現象に対する保護能力を高める」と指摘する。

    BDNF、神経可塑性、神経発生は、メンタルヘルスをどのように改善するのだろうか? 神経可塑性が意味するのは、脳は変化できるということである。 つまり、遺伝的にメンタルヘルス障害の疑いがあったとしても、新たな神経経路を形成することで自ら調整し修正する能力が脳には備わっている。

    ストレスの多い仕事、別離、経済的困窮など、生活の中のストレス要因はすべて神経可塑性に影響を与え、抑うつや不安感へとつながる。 しかし、これは逆方向の可能性も示唆している。 つまり、日々の習慣、行動、思考パターンを調整することで、新しい神経経路と脳の継続的な変化を生み出してメンタルヘルスを改善し、ストレスレベルを下げることができる。

  3. 3.血流の増加

    血液と酸素流量が増加するだけでも、メンタルの改善をもたらすには十分である。 血液は、高機能な脳に不可欠な酸素と栄養素を運搬する。 酸素が行き渡った脳では、特に海馬が活性化する。 海馬とは、記憶や学習と関連する脳の一領域であり、意欲、気分、喜び、痛みなどをコントロールする働きのある領域である。

    いくつかの研究では、大脳の酸素レベルの減少は抑うつやうつ症状の予兆であることが明らかになっているが、これは逆もまた真であり、抑うつが酸素レベルの低下を引き起こすこともある。 脳に酸素が足りなくなると、脳細胞の機能が低下し、細胞が死んでしまう可能性もある。 ある調査でもこの点を支持しており、メンタルヘルス障害は脳内物質の喪失と関連していることを明らかにしている。

  4. 4.満足感や活力感も確立する可能性

    人はアクティビティを最後までやり遂げることで、自分の能力に自信を持つようになる。 例えば、週5日、朝6時に起きてワークアウトを行うという目標を立てたものの、2日目には寝過ごしてしまった場合、あなたは自分に満足することはないだろう。 エクササイズは、セルフケアのためのツールとしてだけでなく、自分に自信を持ち、能力を確信できるようにするためのツールとしても利用できる。

    Neuropsychiatric Disease and Treatment』(2016年)に掲載された臨床試験では、身体活動は自尊心、体力の自覚、身体的イメージと直接的に関連することが明らかになっている。 一方、興味深いことに、ボディマス指数(BMI)との明確なリンクは存在しなかった。

    このことが示すのは、エクササイズおよび身体活動から恩恵を受けるために、特定の体重である必要はないということである。 つまり、どんな経験レベルの人でも、定期的なエクササイズを続けることで、自尊心や自信を築くことが可能なのだ。 エクササイズは身体的な幸福感を高め、あなたが暮らす世界を変化させる。

    ワークアウト後に満足感や活力を感じるために、マラソンを走ったり、自己最高記録に挑戦したりする必要はない。 ただ、エクササイズプログラムに取り組むだけでよいのである。 ハードに取り組み、継続すること。 それだけですべてが得られるだろう。

調査によって判明:エクササイズによるメンタルヘルス改善の可能性

専門家は、沈んだ気分、ネガティブな思考、心理的な不安、過度の恐怖や心配、やる気の不足、集中力の低下や疲労はすべて、精神疾患の兆候と考えられると指摘する。 いずれのメンタルヘルス不調の兆候も、単独で現れることもあれば他の兆候とセットで現れることもある。健康の専門家は、その兆候や遺伝的傾向に応じて、抗うつ剤のような投薬を薦める場合もある。 しかし、定期的な身体活動が、こうした兆候を緩和する可能性もある。

運動のクラスを10週間受講したグループを調査したある研究では、運動が抑うつの発生率に影響を及ぼすことが観察されている。 研究者は、この介入グループでは抑うつ関連の兆候の発生率が30%低下したことを発見した。

また、357人が参加した別の研究では、不安感を抱く患者グループを対象に、エクササイズ前後の不安度レベルを測定した。 1年にも及ぶ取り組みの後、エクササイズグループに割り当てられた参加者は不安が大幅に減少するという結果が得られた。

ヨガに焦点を絞った3番目の研究では、ストレス、不安、抑うつの指標を測定した。 『International Journal of Preventive Medicine』に掲載されたこの研究では、4週間にわたる試験の結果、ヨガはメンタルヘルスの不調の兆候を劇的に減らし、知覚されるクオリティオブライフを高められることが明らかになっている。

ワークアウトの効果を高める

屋外のエクササイズ、グループでのエクササイズは、メンタルヘルスへの効果を高める。 PNASに掲載された2015年の研究では、自然の中で90分間のウォーキングをした参加者グループは前頭前皮質の活動がより低いことがわかった。 この脳の領域は、不安の兆候、ネガティブ思考と関連する領域である。

友人とのエクササイズ、またはグループでの身体活動は、メンタルヘルスに有益な効果をもたらすことができる。 『Med Sci Sports Exercise』ジャーナルに掲載された研究では、集団でのエアロビクスは、メンタルのレジリエンスとメンタルヘルス全般を向上させることが指摘されている。 これは、エクササイズによる生物化学的な恩恵と社会的つながりの相乗効果によるものと言える。

エクササイズを始めるにあたって、適切なギアを用意することも大切だ。まずはNike.comをチェックしよう。

公開日:2021年12月29日

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