プロのようにランニングシューズを選ぶには

Coaching

フィット感、歩き方、機能など、自分に合ったシューズを選ぶために知っておくべきことをご紹介。

最終更新日:2021年7月21日
自分に合ったランニングシューズの選び方

履く人を走る気にさせるランニングシューズは存在する。これは本当のことだ。長距離ランニングに耐え、足を守り、願わくは毎回のワークアウトを充実したものにするシューズ。そんなシューズなら、ランナーは負担が軽減されると感じられるかもしれない。

そんなシンデレラの靴のようなシューズは、どうやって見つければいいのだろう?「自分の足の骨格を守り、サポートするシューズを選べば良いのです」とアドバイスするには、クロストレーニングとけがの予防を専門とするオハイオ大学の運動生理学者、イアン・クラインだ。初心者は、見かけ(正直に言えば、これも重要だが)やレビューでシューズを選ばないようにすべき。よく考えて、適切なスタイルを見つける努力をしよう。詳しいことは後述するので、そのまま読み続けて欲しい。

1. 選択肢を絞る

これは簡単。しごく当然なことでもある。ランニングするつもりなら、ランニング用シューズを履こう。トレーニングシューズ(やウォーキングシューズ、ライフスタイルシューズなど)ではない。オンラインでも店舗でも、真っ先にお目当てのカテゴリーに進もう。

「ランニングシューズは直線運動を想定して作られており、クッションの効いた快適な履き心地で、その運動パターンをサポートします」と説明するのは、Nike Run Club Chicagoでコーチを務めるエミリー・ハッチンス。一方トレーニングシューズは、スクワットやランジ、サイドシャッフルのように多方向の運動で安定性を発揮する。

2. 履き心地を重視する

自分にぴったりのランニングシューズを履けば、自分の体の一部のように感じられるはずだ。「シューズの履き心地が悪ければ、一歩進むごとに不快な思いをするのは確実です」と、Nikeのグローバルランニング担当シニアディレクターを務めるクリス・ベネット、通称ベネットコーチは言う。足取りに不快感があると、体がフォームを補正し、自然な歩き方に影響が及ぶ、怪我につながることもある、と彼は付け加える。

ランニングシューズ専門店に行けば、歩き方を分析して具体的なアドバイスがもらえる(詳細は後述)。販売員がさまざまなモデルを試し履きさせてくれるが、一番重要なのは履き心地であることを忘れないように。「履き心地の良くないシューズを勧められたら、自分の感覚を優先させるべきです」と、ニューヨーク大学ランゴーンヘルス・スポーツパフォーマンスセンターの理学療法士で整形外科臨床専門医のケイト・ヴァンダムはアドバイスする。結局のところ、自分の足がどう感じるかを一番よく知っているのは自分だ。

たとえば、プロネーションの度合いによっては、安定性の高いシューズが最適な場合もあるが、足のどこかに当たって痛かったり、かかとがこすれたりするシューズもある、とランナーの下肢障害を専門とする理学療法の医学博士リー・ウェルチ(The Running PTsの共同所有者でもある)は言う。店にあるシューズを片っ端から履いてみよう(トレッドミルで試すことができればなお良い)。返品・交換ポリシーの厳しくない店で購入して自宅で試し履きするのも良い。

「足の骨格を守り、サポートするシューズを選べば良いのです」

イアン・クライン
運動生理学者

3. シューズのフィット感

シューズ選びに欠かせないのは適切なサイズ。

シューズのサイズが小さすぎると、まめができたり足指の爪が黒ずんだりすることがある。大きすぎると、走ったときに足がずれ動くので、正しく衝撃を吸収したり強く蹴り上げたりすることができなくなる。

ちょうど良いフィット感とは、「つま先とシューズ先端の間に少しすき間がある状態です。なぜなら、シューズ底が曲がる位置は母指球の下の部分であり、その後方ではないからです」とウェルチは説明する。また、つま先を少し動かせる余裕も必要だ。動かせなければ、そのシューズは小さすぎるということだ、とウェルチは言う。

プロからのアドバイス:店舗、オンラインにかかわらず、購入した後で試し履きをするのは、走った後か夕方以降が良い。ウェルチによると、足は朝から夜になるにつれてむくむが、それはランニング中の足のむくみと同様だからだ。ワークアウト前や早朝にシューズを試し履きをしたシューズは、実際にはきつすぎることもあり得る。

4. 足のあらゆる問題を考慮に入れる

最適なシューズを選ぶには、自分の足の骨格や走り方を考慮する必要がある。よくある問題とその対処方法を紹介しよう。

  • オーバープロネーションまたはアンダープロネーション
    プロネーションは、ある程度は誰にでも必要なものだ。ヴァンダムによると、ランニング中、足は着地するたびに自然に内側に傾き、回内位になる。そして地面を蹴り出す時には外側へと傾き、回外位になる。この自然な体重移動があるからこそ足をすばやく動かし続けることができ、平らではない路面の上でも走ることができる、とウェルチは言う。また、彼によるとこの体重移動による最も重要な点は、「体にかかる衝撃を吸収し、体の損傷を防ぐこと」だという。

    ただし、プロネーションが大きすぎると問題が起きる。オーバープロネーション、つまり足が内側に過剰に傾くと、足底筋膜炎や腸脛靭帯炎、梨状筋症候群、膝の痛み、シンスプリントが発生する危険がある、とウェルチは指摘する。プロネーションが小さすぎると、足の関節が衝撃を吸収するように動かず、ほぼ全体重が足の外側にかかってしまい、疲労骨折になることもある、とヴァンダムは言う。怪我をすると数週間、数か月単位で活動できなくなるので、何としてでも避けたいところだ。

    オーバープロネーションの人は、足の過剰な傾きを防ぐのに役立つ硬めのミッドソールを備えた、安定感をあるシューズを好む傾向がある、とヴァンダムは言う。アンダープロネーションの人は、クッショニングに優れた(つまりサポート力が弱め)で衝撃吸収力の高い、ニュートラルなシューズが適していることが多い。

  • 扁平足または甲高
    扁平足の人はサポート力が高めのシューズを検討すると良い、とウェルチはアドバイスする。逆に甲高の人は「何を履いても問題ありませんが、ニュートラルなシューズがおすすめです」。

  • 足底筋膜炎
    足底筋膜炎とは、足裏の真ん中を縦に走って土踏まずを支えている力強い帯状組織、足底筋膜が損傷した状態だとクラインは説明する。トレーニングのしすぎや急にランニングの距離を伸ばすなど、過剰なストレスがかかった場合に発生することが多い。足底筋膜炎になると、かかとからつま先にかけて足裏に鋭い痛みが走る。

    足底筋膜炎の程度がひどくない場合や、早めに処置した場合は、長距離を回避すれば走り続けられることが多い。そのようなケースでは「サポート性の高いシューズほど良い」とヴァンダムは言う。かかとに多めのクッショニングが配された安定性の高いシューズを履けば、痛みが和らぐことがある。

5. メインの使い方を考える

「毎日軽くランニングする人には、ある程度クッショニングのあるニュートラルなシューズが適しています」、と米国陸上競技連盟認定コーチのジェイソン・フィッツジェラルド(Strength RunningのヘッドコーチとしてThe Strength Running Podcastのホストも務める)はアドバイスする。ほとんどのニュートラルシューズはクッショニングと反発力を兼ね備えているので、長距離ランで疲れにくく、ペースを上げたいときには十分なエネルギーリターンも得られる。

レースやスピードワークアウトには、軽めのシューズが威力を発揮する、とベネットコーチは言う(全力疾走をやるなら、ストライドごとに足が持ち上げる重量が軽いほど良い)。「レース用フラットシューズはトラックの感触をよく伝えてくれますが、トラック以外にも履けます」とNike Run Club Chicagoでコーチを務めるロビン・ラロンドは言う。

オフロードで走りたい場合は、木の根や石、岩がある場所や、凸凹のある柔らかい表面を走りやすいトレイルランニングシューズが必要だ、とラロンドは言う。丈夫なソールと幅広いベース、グリップ力の強いトレッドがあり、優れたトラクションを発揮する。トレイルランニングシューズを買うときは、耐水または防水加工が施され、小石などが入りにくい履き口のものを探すと良いだろう。岩だらけのトレイルや急坂のトレイルを走るなら、ミッドソールにロックプレートを備えたシューズがラロンドのおすすめだ。つまずいたり不自然な着地をしても足が守られ、傾斜の激しい場所でもより容易に走れる。

シューズの交換時期を把握する

これまで紹介したチェック項目をすべてクリアして、大切なシューズを手に入れたとしよう。すばらしい!しかし残念ながら、また近い将来この作業を繰り返すことになるだろう。「シューズは筋肉のようなもの。疲れると機能しなくなります」とクライン。「くたびれたり履き古したシューズは、構造的な品質が損なわれ、本来の機能を発揮できなくなります」。

ほとんどのランニングシューズは、走り方にもよるが、500-800kmの距離なら問題なく走れる、とウェルチは言う。ただし、オーバーストライドや過剰なプロネーション、極端につま先やかかとに近い側での着地などが重なると、アウトソールの摩耗が早くなるという。

シューズの交換時期は、シンプルに足の感覚に注意して決めるのが良い、とフィッツジェラルドは言う。「サポートとクッションがこれまでどおり、膝下から足の先まで効いているかどうかを確認しましょう」。そうでない場合や、ソールが摩耗している兆候が見られたら、新しいシューズに交換するタイミングだと彼は言う。

運良く自分の定番スタイルがまだ販売されていれば、その新品を手に入れるだけで良い。しかし、バージョンがアップデートされていたら、試し履きをして変更された点が自分に合うかどうかを確認しよう。そんな場合でも、このチェック項目を一度たどっておけば、自分の求めるものがすぐにわかる。

それに、買い物に出かける口実にもなる。

文:アシュリー・マテオ
絵:ジャスティン・トラン

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公開日:2020年6月24日

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