バーンアウトしない目標の立て方をエキスパートが解説

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モチベーションが上がらず、目標への道のりを苦行のように感じ始めたら要注意。ここで紹介するアドバイスを参考に、調子を取り戻そう。

最終更新日:2023年3月30日
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バーンアウトしない目標の立て方

フィットネス、睡眠習慣の向上、将来のキャリアパス。どんな目標でも、上手く設定すれば一貫して進歩し続けるための土台になる。 でも目標を設定すると、逆にやる気を失って最悪の結果を招きかねないと考える人もいる。

ジェームズ・クリアー氏は、自著『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』でこの理由について延べている。目標追求によって起きる変化はごく一時的なものであることが多く、行動全般が変わることはないのがその原因だ。 数週間でも数日間でもいい。短期間で習慣を変えようと試みた経験は多くの人にあるはずだ。 だがその新しい習慣が持続できないと感じてしまい、目標達成の途上で燃え尽きる可能性もある。

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クリアー氏の著書は、目標設定がもたらす「ヨーヨー効果」についても指摘している。何らかのレースを完走するといった明白な1つの目標を立てた場合、ゴールして成功を収めたら目標が消えてしまう。その後は当てもなくトレーニングをすることになりかねない。

だからと言って、個人で目標を立てることが無駄だというわけではない。 有意義で達成可能な目標の設定は、進歩を重ねながら現実的に行動を変えていくための重要な要素になる。 目標設定においては、自分のニーズに合わせて調整することが鍵になる。感情の働きを自覚し、将来に前向きな意識を持つことが大切だ。

目標設定の手引き:長期的な目標を達成するためのヒント

  1. 1.ヒント1:スマートな目標設定

    バーンアウトしない目標の立て方

    特に有効な目標設定の1つが、スマート(SMART)な目標を立てる戦略。 「具体的(Specific)」で、「測定可能(Measurable)」で、「達成可能(Achievable)」で、「適切(Relevant)」で、「期限付き(Time-bound)」の目標が、スマート(SMART)な目標設定の基準といえる。

    まず目標を具体的に決めると、良いスタートが切れる。何を達成したいのか、サポートしてくれそうなのは誰か、目標への進捗状況をどのようにしてチェックするか、対処が必要になる障害(スケジュールの問題やモチベーションの喪失など)は何かといったことを、はっきりと認識しやすくなるからだ。 なぜわざわざその目標を選んだのかという理由をきちんと認識できるよう、まずは具体的に目標を決めることが重要だ。

    スマート(SMART)な目標の基準となる別の要素は、目標への進捗状況を評価できることと、現実的で有意義な目標を選ぶこと、そして期限を設定すること。 スマート(SMART)な目標を複数積み重ねるように設定してもよいが、なるべく少数にとどめておく方が無難だ。一度に追求する目標が増え過ぎて、打ちのめされることがないようにしよう。

    たとえば仕事で一日中座ったまま過ごす生活を相殺するために、6週間で体重の半分のウェイトをデッドリフトできるようにする。チャリティーへの参加として、3か月で5kmランニングをする。2か月後の障害物レースに参加する準備として、うんていを端から端まで渡り切る。 どの目標も個人の状況に見合ったレベルであり、一定の期間で達成が見込めて、目標への進捗状況も確認できる。

  2. 2.ヒント2:言葉に注意する

    バーンアウトしない目標の立て方

    スマート(SMART)な目標にもう一つ要素を加えるとしたら、 それはポジティブな心構えだ。

    2020年に学術誌『PLoS One』で発表された研究では、新年の抱負を立てた1,000人以上を対象に、1年後に追跡調査を実施。 似たような目標を立てていてもネガティブな言葉を使う人がいた一方で、抱負を守り続けることに成功した人はポジティブな言葉を使っていたことがわかった。

    たとえば、「この1週間は外食しないようにする」という目標は、「特にイベントがない限り毎晩自炊する」という目標と大差がないようにも感じる。 だが後者の方が、目標に対してポジティブな表現になる。 前述の研究によれば、ポジティブな言葉を使う人の約59%が、新年の抱負の実現に成功していた。 このような言葉遣いは、悪い行為を避けるという行動に着目するのではなく、「アプローチを重視する」意識の現れだと研究者は結論付けている。

    (関連記事:Nike Run Clubアプリでランニングの目標達成を目指す方法

    そのポジティブな心構えは、スマート(SMART)な目標設定への応用も簡単だ。 一般的にポジティブな意識を持てば、目標達成への道のりも楽しくなるのは言うまでもない。そう話すのは、 カリフォルニア州立セント・ジョンズ・ヘルスセンターのパシフィック神経科学研究所で脳の健康の指導に当たるライアン・グラット氏(ACE認定パーソナルトレーナー)だ。

    「楽しむことが、目標達成に向けた努力を妨げるという誤解があります。チャレンジには忍耐が付き物だという考え方です。 でも楽しんで取り組んだときに、どれだけやる気が出やすくなるかを思い出してみましょう。 わくわくする気持ちやポジティブな意識で目標を設定し、達成に必要な取り組みをこなしていくのです」

    グラット氏によると、脳は報酬を得ることで機能する。これは中脳辺縁系と呼ばれる部分の働きだ。 意思やモチベーションもある程度はやり遂げる力になるが、報酬がなかなか得られないといらいらするかもしれない。 目標にネガティブな要素が含まれていると、ニュートラルな意識を保つ場合よりも早くモチベーションが失われかねない。 ポジティブな意識を保ち、目標達成の成果として得られることに気持ちを向け、達成プロセスを楽しむこと。そうすれば、正しい方向に向かって長い道のりを歩み続けられるはずだ。

  3. 3.ヒント3:時間をかけて新しい習慣に適応する

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    目標達成に向けて取り組むとき、一つひとつ進歩を重ねていくなかで不安が押し寄せることもある。 たとえば、予定通りにワークアウトをこなし、進歩を実感し、成功への道を順調に歩んでいて、その状況に満足していても、不安や抵抗を感じるのだ。

    たとえプラスの変化であっても、大きな変化によって落ち着かない気分に陥るのは珍しくない。そう語るのは、Amplify Wellness & Performance所属のシャロン・チャーバン氏(臨床心理学者)だ。

    「プラスの変化であっても、人は変化に伴う感情の移ろいをうまく説明できないものです。 目標を設定して達成に取り組むと、行動の変容が求められます。この変容が、本人のアイデンティティにも波及効果をもたらすことがあります。 ある程度は自分の在り方を変えることになるのです。 それが自分にとってプラスになる場合でも、落ち着かない気分になることはあるでしょう」

    以前は喫煙者だった人が、禁煙した場合もそんな状況になる。 あるいは、猛烈な仕事人間タイプが、休みの回数を増やすことを目標にしたとき。仕事人間というアイデンティティは、もうその人から失われてしまうだろう。

    いずれも目標設定やその達成への前向きな進歩だが、一時的に調子を損ねる可能性がある。新しい習慣への適応や、新しい段階へのチャレンジに加えて、心理上の急激な変化にさらされるためだ(チャーバン氏談)。 つらいことも含め、すべての変化をどう感じるかについて日記に記録することをチャーバン氏は提案している。

    「変化のプロセスから与えられる影響を認識することが、より持続可能なやり方で目標を追求するための大きな一歩になります」

文:エリザベス・ミラード(ACE認定パーソナルトレーナー)

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公開日:2023年3月22日

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