睡眠が健康とアスレチックパフォーマンスにとって重要な理由

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睡眠が健康とアスレチックパフォーマンスにとって重要な理由をご紹介。質の高い睡眠は、どのようにリカバリーを助け、ホルモンを調整し、気分を高め、トレーニング効果を向上させるのか。その仕組みを知り、専門家が推奨するより良い睡眠のためのヒントを学ぼう。

最終更新日:2026年1月12日
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睡眠がとても重要な理由 アスリートのリカバリーと睡眠の関係について、エキスパートが解説

睡眠は、リカバリーを促し、ホルモンを調節し、記憶を定着させるための生物学的プロセスだ。そのメリットは、運動のパフォーマンスや気分、長期的な健康に直接的な影響を及ぼす。睡眠の重要性については多くの人が基本的な知識を持っているものの、睡眠が重要な理由や、アスリートに必要な睡眠量となれば、話はもっと複雑だ。

栄養バランスの調整や、深部組織マッサージの他に、体と脳の回復を促す方法を探しているなら、まずは睡眠習慣をよく見直してみよう。その仕組みを学ぼう。

主なポイント:

  • 睡眠はリカバリーに欠かせない要素だ。
  • 体は、寝ている間に重要な修復作業を行うのだ。
  • 必要な睡眠時間は人によって異なる。

睡眠が運動パフォーマンスを向上させる仕組み

2019年に学術誌『International Journal of Sports Medicine(国際スポーツ医学ジャーナル)』で発表されたレビュー論文によると、睡眠は健康全般に欠かせないものであり、スポーツのパフォーマンスにも大きな影響をもたらす。睡眠不足によって反応は遅くなり、筋力や持久力も低下する。さらには気分の落ち込みや活力の低下にもつながると研究者たちは指摘している。

2021年の学術誌『British Journal of Sports Medicine(英国スポーツ医学ジャーナル)』では、スポーツ医学の専門家による合意声明として別の分析が発表されている。その分析によると、一流アスリートになるほど睡眠不足の影響を受けやすい。移動、試合の開始時間、けがなどが原因で睡眠時間が総体的に足りなくなったり、どうにかして眠ろうとしても睡眠が妨げられたりする。この論文の著者たちによると、アスリートだけでなく幅広い層を対象にした以前の調査から、睡眠不足は呼吸器感染症や心疾患のリスクなど、その他の健康上のリスク要因にもなることがわかっている。

2022年に学術誌『Journal of the American Heart Association(米国心臓協会ジャーナル)』で発表された研究によると、睡眠不足、睡眠過多、質の悪い睡眠パターンが心血管系疾患のリスクを高める要因になる。また、免疫系の反応、効果的に血糖値を調節する機能、消化器系の健康維持といった他の要素についても、睡眠の質が影響を与えるとする別の研究結果もある。

こういった研究はすべて、睡眠がワークアウト後のリカバリーに効果をもたらす根拠になる。そう語るのは、クリス・ウィンター博士(シャーロッツビル神経学と睡眠医学研究所長)だ。リフレッシュした気分で次のエクササイズに臨めるという効果だけでなく、睡眠によって心と体のエネルギーなど別の面でもパワーアップが感じられる。

「夜によく眠ることが大切なのは、翌日のパフォーマンス向上のためだけではありません。睡眠の質は、思った以上に体に影響を及ぼします。トレーニング後のリカバリーを促進するだけではなく、健康上のほぼあらゆる側面に影響する可能性があるのです」

睡眠がパフォーマンスの回復に役立つ理由

睡眠中、特に深い眠りに入っているときに、活動中には見られない体の回復機能が働く(ウィンター博士談)。たとえば、脳下垂体から分泌される成長ホルモンによって新しい筋繊維が作られ、傷ついた筋肉組織が修復される。トレーニングするだけでは、筋肉の大きさや筋力は向上しない。健康に詳しい専門家や、パーソナルトレーナーたちがそう語る理由のひとつも睡眠にある。トレーニング中ではなく、ワークアウト後に筋繊維が修復されることで筋肉は強くなるからだ。

適切なリカバリーなしで筋力向上は望めない。過剰なトレーニングによって筋肉がさらに傷つき、炎症が生じる可能性もある。

リカバリーにおける睡眠、気分、メンタルヘルス

リカバリーのもう一つの重要な要素は、ストレス緩和だとウィンター博士は言う。エクササイズをすると、体と心にある程度のストレスがかかる。日中にできるストレス解消法も効果はあるが、中枢神経系(CNS)が最もリラックスするのは睡眠中だという。つまり、夜間の質の高い睡眠には、CNSをリセットし、慢性的なストレスによる潜在的な悪影響を減らす効果があるのだ。

学術誌『Sleep Medicine Reviews(睡眠医学レビュー)』に掲載され、73件の研究を調べた2020年のメタ分析では、推奨される睡眠時間よりも睡眠が少ないと、怒り、うつ、不安感などの気分障害が55%増加することがわかった。研究者はその結論の中で「睡眠は、気分の低下を防ぐための普遍的かつ修正可能なリスク要因です」と述べている。

筋力トレーニングによって改善される睡眠とリカバリーの関係

睡眠はリカバリーを助け、スポーツのパフォーマンスを全般的に向上させる効果が期待されるが、この関係は一方通行ではない。筋力トレーニングなどの運動を習慣化すると、睡眠の質が向上することを証明した研究もある。

筋力トレーニングを毎週の習慣に取り入れるとプラスの循環が生まれる。そう語るのは、睡眠とエクササイズについて研究するジェイソン・ベニー博士。サザンクイーンズランド大学(オーストラリア)で、身体活動に関する疫学の准教授を務める専門家だ。運動を習慣にすると睡眠の質が向上し、睡眠の質が向上すると運動のパフォーマンスが高まる。相互にメリットをもたらす関係が築けるということだ。

2020年に学術誌『Preventive Medicine Reports(予防医学レポート)』では、ベニー博士が筆頭著者を務めた研究論文が発表されている。成人23,000人以上を対象にした調査から、レジスタンストレーニング(どんな頻度や強度でも)によって、不眠症の病歴がある人でも睡眠の質が向上することが明らかになった。この調査は、18歳から65歳以上までの男女を網羅している点が重要であるとベニー博士は語る。

「対象者が多数であることを考えると、性別や年齢にかかわらず、睡眠とトレーニングの関係が誰にでも当てはまることを示す有力な証拠だと言えます」とベニー博士は言う。その理由には、心拍変動や血圧を改善させたり、グルコースやコレステロールの調節機能を向上したりする睡眠の効果も含まれる。このような現象を見れば、質の良い睡眠と運動習慣が健康に役立つという事実にも納得できるだろう。新しい運動習慣を始める前には、医師やトレーナーに相談することをおすすめする。

パフォーマンスのために必要な睡眠時間

睡眠がパフォーマンスやリカバリーに役立つことはお分かりいただけただろう。では、どれだけの睡眠をとれば効果が出るのだろうか。その答えは、1日に必要な水分量と同様に、個人の体質や環境によって異なる。


アメリカ疫病予防管理センター(CDC)は、年齢別に推奨される睡眠時間を提案している。

  • 就学年齢の子ども(6〜12歳):9〜12時間
  • ティーンエイジャー(13〜17歳):9〜10時間
  • 成人:7時間以上

アスリートの場合、理想的な睡眠時間は、運動の種類や強度、個人の睡眠ニーズなどの要因によって異なるが、一般の人よりも多くの睡眠を必要とする傾向がある。学術誌『International Journal of Sports Physiology and Performance(スポーツ生理学とパフォーマンスの国際ジャーナル)』に掲載された、175人のエリートアスリートを対象とした調査では、ほとんどのアスリートが、休息を感じるためには8.3時間の睡眠が必要であると回答している(ただし、回答者の多くはその睡眠時間に1時間以上足りていない)。

だが、ウィンター博士は、CDCが推奨する睡眠時間はあくまで目安だと話す。「もっと重要なのは、1週間の合計睡眠時間です。つまり夜更かしの悪影響が数日に及ぶほどでなければ、日によって睡眠時間に多少のばらつきがあるのは構いません」

1週間の合計で一定の睡眠時間(通常は50~60時間)をとるべきだと、ウィンター博士は述べている。合計睡眠時間を増やすために多少の昼寝が必要になる日も、毎日ではなく時々あるくらいなら問題ないと博士は語る。

睡眠の質を改善するためのヒント

万人に共通する理想の睡眠時間は定義できない。就寝時刻や起床時刻をあれこれ試して、自分に最適な睡眠時間を習慣化する必要がある。そのためには、

  • まずはトレーニングの強度やリカバリーの要件など、自分のニーズを考慮すること。
  • そして、睡眠とトレーニングの記録を残すこと。ウィンター博士は、トレーニング時間、就寝時刻、睡眠の質の感じ方、目覚めたときにすっきりしているかどうか、一日のエネルギーレベルがどうだったか、さまざまな変化を記録していくことを推奨している。運動した日は、こうした変化に特に注意を払おう。

パターンを把握すると、自分に必要な睡眠時間がわかって習慣化できるようになる。「睡眠と運動とリカバリーのつながりを意識すること。それだけで、健康的な習慣を身につけられるようになりますよ」

さらに、基本的な睡眠衛生の推奨事項に従うことも重要だ。たとえば、

  • 就寝時間と起床時間を一定に保つようにする。
  • 寝室を静かで涼しい状態に保つ。
  • 就寝の少なくとも30分前には電子機器をオフにする。
  • 就寝前の多量の食事やアルコールは避ける。
  • 午後や夜はカフェインを控える。
  • 定期的に運動する。
  • そして、健康的な食事を心がけよう。

よくある質問

アスリートにとって睡眠が重要な理由は?

ウィンター博士によると、睡眠はリカバリー、気分、免疫、全体的な健康に重要な役割を果たし、これらはすべて運動パフォーマンスに影響を与える可能性がある。睡眠を含む適切なリカバリーがなければ、筋肉の損傷や炎症のリスクが高まるのだ。

週末に睡眠を「取り戻す」ことはできる?

ウィンター氏は、一般的に、就寝時間と起床時間のスケジュールはできるだけ一定に保つことを推奨している。「ルーティンを守るのが良いでしょう」と博士は言う。しかし、睡眠不足が過去7日以内のものである場合は、週末に睡眠を取り戻すというのも、効果的な「プランB」だとウィンター博士は述べている。ルーティーンから外れてしまった場合でも、週末に睡眠を取り戻すことは少なくとも心臓の健康に役立つ可能性があることが研究で示されている。

たくさん運動した場合、6時間の睡眠で十分?

運動量に関わらず、6時間の睡眠では不十分だ。アスリートは通常、一般の人よりも多くの睡眠を必要とし、成人の場合、1日7時間の睡眠が最低限必要と考えられている。

昼寝は運動パフォーマンスに役立つ?

複数の研究で、短い昼寝(30〜60分)は、アスリートの疲労感や痛みを軽減するなど、運動パフォーマンスを向上させる可能性があることが示されている。しかし、ウィンター博士は、昼寝は必要に応じて時々取り入れる程度に留め、毎日の習慣にするのは避けるべきだとしている。

睡眠がとても重要な理由 アスリートのリカバリーと睡眠の関係について、エキスパートが解説

トレーニングの効果を最大化するためのヒント

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文:エリザベス・ミラード

公開日:2026年1月12日

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