免疫力を上げるために食生活を変えられるか?

コーチング

ある程度は食生活の改善で免疫力を上げることができる。免疫力を蓄える食べ物と免疫力を制限する食べ物を知り、最前線で身体を守る働きを高めよう。

最終更新日:2021年1月26日
食生活で免疫力は上げられるか?

最近、免疫力の向上に有効なウコンとビタミンCが、除菌用ハンドジェルと並んで大人気商品となっている。体を健康に保つためにあらゆる対策を講じようと、人々はスーパーフードやサプリメントを買い込んでいる。しかし、それはいったい何に効くのだろうか?食事で免疫システムを高めることはできるのだろうか?

ある程度は可能だ。しかし、野菜ジュースを飲むだけでなく、もう少し計画的に実践することが必要。

免疫システムのしくみ

ここでちょっと生物学の復習をしよう。免疫システムは、細胞とタンパク質で構成される複雑なネットワークであり、有害なウイルスや細菌に対する防御を体内で最初に(そして最善の方法で)行うものだ。免疫システムを強化するには、そのネットワークに直接影響を与える他の健康の側面(この場合は栄養)に注目しなければならない。

何を食べるかが重要は理由は何だろう?免疫システムには、タンパク質などの主要栄養素に加え、十分な量の必須微量栄養素が必要だ。これらが相互に作用し、敵の侵入に対して直ちに警告を発し、防御する。しかし、微量栄養素(ビタミンCなど)を1種類だけ大量に摂取しても、十分な防御対策にはならないと、免疫学を専門とするオレゴン州立大学ライナスポーリング研究所の生物化学および生物物理学教授であるエイドリアン・ゴムバート博士は言う。戦いにはさまざまな力を結集する必要があり、英雄が一人いさえすればいいというものではない。つまり、いろいろな物を食べる必要があるということだ。

免疫システムには、タンパク質などの主要栄養素に加え、十分な量の必須微量栄養素が必要だ。これが相互に作用し、敵の侵入に対して直ちに警告を鳴らし、防御する。

エイドリアン・ゴムバート博士オレゴン州立大学ライナスポーリング研究所、生物化学および生物物理学教授

ありがたいことに、それは口で言うよりもずっと簡単だ。要するに、イライラしたり(ストレスは免疫力を低下させる)、ブームに乗せられたり(多くの場合、有益な食品群を食べなくなる)することなく、栄養たっぷりの食品をたくさん食べて、ビタミンやミネラルを推奨量摂取するということだ。次にその方法を紹介する。

最も有効な微量栄養素に絞る

地元の健康食品のお店にある「ブースター(免疫力の向上に有効な栄養素)」をすべて手に入れるのではなく、専門家が勧める次の4つの微量栄養素に絞ろう。

  1. ビタミンD
    「この脂溶性ビタミンは、侵入者を攻撃する免疫細胞など、体内のあらゆる細胞に、何をすべきか、どのように行動すべきかを指示するヘッドコーチのようなものです」と、ベイラースポーツ栄養士で管理栄養士であるロバータ・アンディング氏は言う。「アメリカ人の3分の2はビタミンCが不足しています」

    達成すべき目標は1日2,000IUだ。お勧めは、太陽光から摂取できるビタミン(専門家は、肌へのダメージのリスクを避けながら、1週間に数回、10~15分間、日中に太陽光を浴び、それを習慣にすることを勧めている)のほか、脂の多い魚(同様に免疫力を上げるオメガ3を含んでいる)、特定のキノコ類、卵黄だ。さらに、ほとんどの専門家は、十分な栄養がしっかり取れるようにサプリメントの摂取を推奨している。
  2. マグネシウム
    「緑色葉野菜に含まれるマグネシウムを摂取すると、炎症を抑え、健康な免疫システムを保つことができます」と、ジョージ・メイソン大学の栄養学教授であるテイラー・ウォレス博士は述べている。ウォレス博士によると、アメリカ人の約半数はマグネシウム不足である。低濃度でも、摂取量を増やせばかなり効果はあるだろう。政府は、成人の男性は1日320mg、女性は1日420mgを摂取することを推奨している。マグネシウムはブルグア(1カップで230mg)、ほうれん草(1カップで157mg)、ナッツ類(アーモンドは1オンスあたり74mg、カシューナッツは80mg)から摂取できる。
  3. ビタミンC
    抗酸化物質のビタミンCは、白血球の生成を促すことが明らかになっている。白血球は攻撃の最前線で戦う小さな戦士のようなものだ。「冷凍ベリーは、最も熟したときに凍らせることで栄養価が最大になるため、非常に有効です」とウォレス氏は言う。アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)は、ビタミンCを毎日、女性は75mg、男性は90mg摂取することを推奨している。具体的に、ビタミンCは1カップのイチゴには85mg、キウイには64mg、1杯の搾りたてのオレンジジュースには約90mg含まれている。

    具合が悪くならないか特に気になる場合は、控えめに摂取しても問題ないとゴムバート氏は言う。直ちに戦闘モードに入らなければならない場合は、エクストラ(全部で約1,000~2,000mg)が便利だ。必要がなければ、余分なものは尿で出ていくだけだ。
  4. 亜鉛
    亜鉛が不足すると、T細胞およびB細胞の生成が阻害される場合があると、Precision Nutritionのパフォーマンス栄養ヘッドコーチで管理栄養士のライアン・マシール氏は述べている。これらの細胞は主に侵入者を検出する兵士の役割を担っているため、強化する必要がある。『Journal of Immunology Research』のレビューでは、適量の亜鉛を摂取することで、慢性的な機能不全による炎症反応が改善することもできることが明らかになった。亜鉛の摂取量を増やす(NIHの推奨では、女性は毎日8mg、男性は毎日11mg)には、全粒粉、豆類、海産物(特に牡蛎やホタテ)がお勧めだ。
食生活で免疫力は上げられるか?

やり過ぎない

摂取しないものも、摂取するものと同じくらい重要だ。免疫阻害物質を最小限に抑えることで、防御力を最大限に高めよう。

  1. アルコール
    ストレスが多いと一杯ひっかけたいという誘惑にかられるかもしれないが、たとえ飲酒癖がない人でも、アルコールは呼吸器系の防御力を弱める可能性があるとAlcohol Research: Current Reviews』の研究は示している、法的に飲酒が許可されている年齢であれば、ときどき1、2杯程度なら飲んでもかまわない(もちろん飲酒が法的に許可されている場合)が、毎日浴びるよう には飲まないようにしよう。
  2. ジャンクフード
    ちょっとしたデザートやポテトチップス1袋なら、いつもより贅沢な食事をしているとしても、普通はほとんど問題にならない。しかしそれは、先ほど挙げた体にいいものなど、健康的で栄養たっぷりの食べ物を常に食べている限りにおいてである。「飽和脂肪が多く、食物繊維やフルーツ、野菜の少ない食事は、免疫機構を阻害する可能性のある炎症反応を引き起こすことがあります」とアンディング氏は言う。
  3. 流行りの食事制限
    健康を維持することが最優先であれば、食品群を制限すべきではない。免疫細胞にはグルコースを必要とするものがあるため、例えば炭水化物を制限することはお勧めできない。

摂取し過ぎることについて

ウコンやショウガなどの抗炎症作用のある「スーパーフード」を利用しても害はないが、1種類の食材やサプリメントで安心という誤った考えを止めて、さまざまな食べ物を食べるようにすることが重要だとウォレス氏は言う。これは、決して人前でマスクを着けない人が、家に帰っても手を洗わないようなものだと考えればよい。

まだ栄養が足りていないのではと心配しているなら、気軽にマルチビタミン剤を摂取しようとゴムバート氏は言う。本物の食べ物の方がいいに決まっているが、少し防御策を加えても誰も傷つくことはない。

公開日:2020年11月6日

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