テンポ ランとは?正しいやり方とランナーにとっての主なメリットについて解説
スポーツ&アクティビティ
テンポ ランとは何か、どのくらいの速さで走るべきか、そしてテンポ ランがペースと持久力をどのように向上させるかをチェックしよう。
10キロランや マラソンなどの中距離または長距離ランで自己ベストを大幅に更新したいと考えているなら、トレーニング プログラムに必須項目としてぜひ取り入れてほしいのがテンポランです。数分ごと に強度を変えながら行うファルトレックワークアウトとは異なり、テンポワークアウトでは一貫性が求められます。 スピードトレーニングともやや異なり、決して楽なランニングで も ありません。
「テンポランというのは、レースのペースよりも遅いものです」ACSM認定の運動生理学者で、ランニングバイオメカニストでもあるケイリー・レイは説明する。「レースのペースでは最大限の力を発揮するのに対して、テンポラン中は、余裕が少し残るぐらいの感覚を維持します」
ここでは、ランニングの専門家がテンポランとは何か、どれくらい速さでどれくらいの距離を走るべきか、そしてなぜこの種のトレーニングを定期的に組み込むべきなのかを解説する。
テンポランとは?
テンポランは、スレッショルドラン(閾値走)とも呼ばれ、持久力とペース効率を試す、持続的で無理のないハードな運動量で行うランニングワークアウトだ。
レイは、コーチによってテンポランのペースの定義は異なるが、大半が、「乳酸性作業閾値(持続可能な走りが不可能になるポイント)をわずかに下回る速度」と認識していると指摘する。テンポランはその限界をさらに押し上げるので、より速いペースでもこなせるようになる。
ランニングコーチの中には、テンポランのペースを5キロレースのペースよりも1マイル(1.6km)あたり約25〜30秒遅いペースと表現するコーチもいれば、ハーフマラソンのペースに近いと考えるコーチもいるとレイは付け加える。
理学療法博士(D.P.T.)であり、Gait Happensのオペレーション担当バイスプレジデントを務めるミリカ・マクダウェルは、テンポランを最大心拍数(HRmax)の75~85%で走ることと定義する。
普遍的な定義がないため、多くのランナーは、会話が楽にできるかどうかなど、感覚を目安にしてテンポランのペースを決めている。テンポランでは、1つの文章を丸々話すのが難しい程度が目安となる。「気楽なランの方が、テンポランよりもずっとリラックスした感覚で走れるはずです」とレイは言う。
テンポランの概要
- 有酸素運動能力を向上させ、乳酸性作業閾値を高めるトレーニングをサポートする
- 通常、自覚的運動強度(RPE)で10段階中7段階のように感じる
- レースペースよりは遅いが、イージーペースよりは速い
- 初心者と上級者のランナーの両方にとって効果的
- 自信、ペースコントロール、レースへの準備態勢を構築
持久力アップのためにテンポランが重要な理由
テンポランは、有酸素能力と乳酸閾値(疲労が加速し始めるポイント)を高めることで、乳酸を処理して排出する体の能力を向上させる。閾値が向上するにつれて、より少ない努力でより速いペースをより長く維持できるようになる。
インターバルワークアウトが短時間の高強度の負荷でVO2 Max(激しい運動時の酸素利用効率)を鍛えるのに対し、テンポランは持続的な努力に焦点を当てる。多くの長距離ランナーは、持久力と強度のバランスを取るために、週に少なくとも1回のテンポランと1回のスピードワークアウトを取り入れている。
テンポランの適切な速さとは?
理想的なテンポランのペースを判断する方法はいくつかある。しかし、おそらく最良の方法は、その日の体調に合わせることだろう。「テンポランは、無理なくハードなペースで行うべきです」とレイは言う。「自分を駆り立てているが、レース中よりもコントロールできていると感じられるペースであるべきです」とレイは続ける。繰り返しになるが、RPEの10段階中7段階程度が目安だ。
数値で判断したいなら、レースタイムに基づいて上記のペースガイドラインを参照するか、走っているときに心拍数をチェックしてみよう。
マクダウェルは、最大心拍数(220から年齢を引いた値)を計算し、そのおよそ75%から85%のペースで走るのが、テンポランのペースの目安になると説明している。
もしワークアウトを最後までやり遂げるのに苦労したり、早い段階で息切れしたりする場合は、速すぎるペースで走っている可能性がある。
テンポランの適切な距離とは?
テンポランの距離は、経験レベルやトレーニングサイクルのどの段階かによって異なる。
長距離ランやテンポランが初めての場合は、1~2マイル(約1.6~3.2km)または10~20分、そのどちらか早い方から始めることをレイは勧めている。体力が向上するにつれて、徐々に時間を延ばしていこう。
「上級者や、長距離レース前のトレーニングサイクルの終盤に差し掛かっているランナーは、12マイル(約20Km)以上のテンポランを行うこともあります」とレイは言う。「ただし、これらのセッションは、間に休憩を挟んで3~5マイル(約5~8km)のランニングに分割されることが多いです。通常、テンポランニングを連続して行う場合、60分を超えることはありません」とレイは続ける。
テンポランニングのメリット
テンポランによって肉体的および精神的な強さを向上させる4つの方法をレイとマクダウェルが紹介する。
1. 運動パフォーマンスを向上させる
「テンポランはトレーニングサイクルを効率的にしてくれますし、パフォーマンス向上の観点から見ても『費用対効果の高い』トレーニングといえます」とマクドウェルは言う。言い換えると、テンポランにはランニングエコノミーを向上させ、レース当日にペースを上げても疲労を食い止める効果がある。
また、新たな目標の達成にはテンポランが欠かせないものであることを示す研究もある。実際、2021年の調査では、イージーランやトレーニング全体の走行距離を除けば、テンポランが運動能力の向上を予測する最も重要な指標であると結論づけられている。「つまりテンポランは、短距離や長距離のインターバルワークアウトよりも重要だということです」とマクダウェルは述べている。
2. 燃え尽き症候群や使い過ぎによるけがを防ぐ
トレーニングの疲れは、精神的にも肉体的にも、走った距離にかかわらず、誰にでも影響を与える可能性がある。これについてマクダウェルは次のように語る。「テンポランをトレーニングに組み込むことで、総合的な持久力を高める効果が得られます。これにより、けがや燃え尽き症候群のリスクを抑えつつ、トレーニングの変化に対応できるバランスの取れたアスリートを育成できます」
また、こうした高負荷ワークアウトは、メンタルのタフさやグリット(やり抜く力)も育めると彼女は指摘する。ペースを上げることでワークアウトが楽しくなってくるので、走る量が増えすぎて、飽きたり、オーバートレーニングになったりするのを防ぐ効果もある、と彼女は言う。
3. 乳酸性作業閾値を高め、レース対応力を強化
2人のエキスパートが口を揃えていたように、テンポランには乳酸性作業閾値を改善する効果がある。「乳酸性作業閾値に近いペースで走ることで、その運動レベルを維持するために代謝プロセスを改善する必要があると体に伝えることができます」とレイは言う。「こうした改善により、乳酸閾値付近またはそれ以下のペースでより速く走れるようになるのです」
さらに、テンポランは心血管系や筋骨格系にかなり負荷がかかることが多く、レース当日の状況を再現するようなトレーニングだとマクダウェルはつけ加える。つまりこれらのトレーニングを通じて、全力のレースに近いペースを長い時間維持することが求められるため、レースペースの強度に体を慣らすことができるわけだ。
4. レース当日の自信とペースコントロールを構築する
テンポランは、特にトレーニングサイクルの終盤で効果的だ。ランナーがレース準備が整っていることを自分自身で確認するのに役立つ。「テンポランは特定のスピードで行う必要があるため、適切なペース配分が学べるとともに、速く走ってもコントロールを維持する方法を習得できます」とレイは言う。さらにレイは、レース当日が近づくにつれて長いテンポランを行うことで、自信が大きく高まり、ランナーは自分の体力に自信を持ち、レース本番に備えられると付け加える。
おすすめのテンポランワークアウト
初心者、中級者、ベテランのランナー向けに考案された3つのテンポランワークアウトをレイが紹介する。
初心者向けテンポランワークアウト
この初心者向けテンポランワークアウトは、初心者ランナーにとって負担にならず、安定したチャレンジングなペースで走ることで、ランナーとしての自信を深めることができる。
対象者:
イージーランで基礎をしっかりと身につけ、5キロ走のような短距離のトレーニングをしている初心者ランナー
やり方:
- 5分間、イージーペースで走る。
- 3分間、テンポペースで走る。
- 最初は2セット繰り返し、慣れてきたらセット数を増やす。
- 全セットが終わったら、クールダウンのために軽いジョギングかウォーキングで終了する。
効果がある理由:
短いテンポランは、初心者がより激しいペースに適応し、それを維持する方法を学ぶのに役立つ。
中級者向けテンポランワークアウト
このテンポランワークアウトは、有酸素持久力を向上させ、ランナーがより長い時間、強い負荷に耐えられるようになる。
対象者:
10キロ走に向けてトレーニングしている、または長距離レースに向けて準備を進めているテンポランの経験があるランナー向け。「定番のテンポランは、4マイル(6.4Km)のテンポランです」とレイは言う。「以下のようにメニューを週ごとにレベルアップさせて、ワークアウトを積み上げていきましょう」
やり方:
- 1週目:テンポペースで1マイル(約1.6Km)に休憩2分 × 4回
- 2週目:テンポペースで1マイル(約1.6Km)に休憩1分 × 4回
- 3週目:テンポペースで2マイル(約3.2Km)に休憩2分 × 2回
- 4週目:テンポペースで2マイル(約3.2Km)に休憩1分 × 2回
- 5週目:テンポペースで4マイル(約6.4Km)
効果がある理由:
より長く、継続的にテンポランを行うことで、有酸素能力が強化され、より速いスピードでの効率的なペース配分が強化される。
上級者向けまたは長時間のテンポランワークアウト
この上級者向けのテンポランワークアウトは、レース終盤までペースを維持できるようランナーを準備するためのもの。
対象者:
上級者向けのテンポランワークアウトは、経験豊富な長距離ランナーや、ハーフマラソンやマラソンに向けてトレーニングしているランナー向け。「今までで最も気に入っているテンポトレーニングの1つは、高校の陸上部のコーチから教わったもので、ロン・ウォーハーストが考案した伝統的なミシガン大学のワークアウトを思わせる内容です」とレイは語る。「観覧席を上り下りする際、蛇みたいに曲がりくねった動きをすることから、そのトレーニングのことを『スネーク』と呼んでいました」
やり方:
- 1マイル(1.6Km)のテンポラン
- 300mのジョギング
- 観覧席の階段や丘を約30秒間、駆け上がるセットを5回繰り返す。下りはゆっくりしたペースで戻る
- 1~2分のジョギングをして、1マイル(1.6Km)のテンポランのスタート地点に戻る
- これを合計2~4回繰り返す
効果がある理由:
テンポランと短い坂道の組み合わせは、持久力、筋力、ペースコントロールを構築し、筋肉疲労が始まってもランナーがコントロールを維持できるようになる。
トレーニングルーティンにテンポランを取り入れる方法
「テンポランは初心者ランナーにとって、とっつきにくいものに思えるかもしれませんが、恐れる必要はまったくありません」とレイは言う。「上記の効果を得るために何キロも走る必要はありません」とレイは続ける。
ランニング初心者は週に1回のテンポランから始めるのがよいでしょう。経験豊富なアスリートは2〜3回のセッションまで増やすことができます」とマクダウェルは説明する。テンポランは通常、最大心拍数の75%以上で行われるため、事前に筋肉を準備し、怪我のリスクを減らすために、適切なウォームアップが特に重要になる。
また、テンポランの間にイージーランや休息日を入れることも不可欠だ。「非常に高いレベルのアスリートで、資格を持つコーチやトレーナーによる綿密な指導を受けている場合でないかぎり、テンポトレーニングを連続して行うべきではありません」とマクドウェルは言う。
よくある質問
ランニングにおけるテンポランとは?
テンポランは、無理なくハードなペースで持続的に走ること。乳酸性作業閾値と持久力を向上させることを目的としている。
テンポランニングは初心者に適している?
はい。テンポランは、初心者がより快適にランニングできるようになるための効果的な方法だ。レイは、まずはイージーランで有酸素運動の基礎を築き、10~20秒のストライドを2~3回、週のトレーニングプランに取り入れてから、週に1回のテンポランを追加することを提案している。
テンポランとインターバルトレーニングの違いとは何か?
「テンポランは通常、ゆっくりとしたペースで持続的に走るものですが、インターバルトレーニングは通常、速いペースで短い距離を繰り返し走るものです」とレイは言う。「ただし、1マイル(約1.6km)を超えるインターバルランを走ったり、テンポランを複数の反復練習に分けて行ったりすると、その境界線は曖昧になります」とレイは続ける。